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ドクター・スリープのYYamadaのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.5
【連続鑑賞のススメ】シャイニング②

〈見処〉
①39年ぶりの続編
・『ドクター・スリープ』は、1977年に発表されたスティーブン・キングの小説「シャイニング」の続編であり、1980年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の映画版『シャイニング』の要素も取り入れた、スリラー作品。
・舞台は1980年のフロリダ。オーバールック・ホテルでの惨劇の後、ジャックの子、ダニー・トランスは、母ウェンディーはフロリダでの生活を始めたが、ダニーは自宅の浴室で、オーバールックホテル237号室に取り憑いていた女性の亡霊に遭遇。善き亡霊であるディック・ハロランはダニーに対し、亡霊が餌を求めてダニーに取り憑いていること、ダニーの心の中に虚構の「箱」を置き、亡霊の封印に使用することを指南。ダニーは女性の亡霊を封印することに成功する。
・時は流れ2011年。ダン(ダニー)は、自身の特殊能力「シャイニング」を抑圧するために酒に溺れた退廃的な生活を送っていたが、ニューハンプシャーの小さな街に移住し、社会復帰。ホスピスの従業員となり、亡くなる直前の患者を慰めるためにシャイニングを使用、「ドクター・スリープ」と呼ばれるようになる。
・2019年、児童に対する不可解な殺人事件が発生。ダニーのシャイニングを上回る不思議な力により、事件を目撃してしまった謎の少女アブラとともに、ダニーは事件を追うが、その中で40年前の惨劇が起きたホテルへとたどり着き、過去の因縁と対峙する…
・近年では、(19年ぶりの)『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』、(35年ぶりの)『ブレードランナー2049』、2021年公開予定(35年ぶりの)『トップガン・マーヴェリック』を超える、39年ぶりとなる、前作からの経過年の長いレコード作品である。

②「2つのシャイニング」の狭間にて
・本作の原作者スティーブン・キングは、
2009年12月に自身の公式サイトにて『シャイニング』『ダークタワー』どちらの続編を書き上げるべきかアンケートを実施したところ、前者の結果が上回った。
・キングは『シャイニング』と『ドクター・スリープ』の継続性に取り組むため、キング研究者であるロッキー・ウッドを雇い、ストーリー構築に着手。2013年9月に原作「ドクター・スリープ」を発表。
・ワーナー・ブラザースは、2013年の原作発表後に実写化を進めたが、前作からの経年を憂慮し、同じくスティーブン・キング原作のホラー映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が興行的成功が確認出来た2017年に本作製作にGoサインを出している。
・ワーナーは、キング作品に造詣が深い、マイク・フラナガンを再執筆及び監督に採用。フラナガンは、キューブリックが原作を歪めまくったが興行的に無視出来ない映画版『シャイニング』(1980)と、小説版『シャイニング』(1977)の忠実な続編の原作「ドクター・スリープ」の調和に着手。
・結果、水と油の関係にあった2つのシャイニングの続編として製作され、キューブリックの映画版を否定するスティーヴン・キングからも評価を受けた奇跡の作品が本作である。

③結び…本作の見処は?
○: 自分を含めた多くの鑑賞者にとっての「シャイニング」は映画版。過去の映像や(オーバールック・ホテルの廃墟が残っているなど)、映画版の続編として成立している点が嬉しい。
○: 新キャラ、アブラの物怖じしない無双ぶりが心地よい。少女が敵キャラを終始翻弄する描写は、ありそうでない。
▲: 映画版しか知らない鑑賞者にとって、シャイニングの特殊能力に馴染みがなく、キューブリックの続編というより『トワイライト』シリーズのような違和感あり。
▲: 映画前作キャラクターの配役変更により、誰が誰だかわからない。
×: 全然怖くないホラー作品となってしまった。
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