みーちゃん

ドクター・スリープのみーちゃんのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.9
正直、あまり期待せずに観たのだが、思ったより良かった。原作や前作との関係云々や、裏話はさておき、一つの作品として、とても丁寧に作られていた。

生きている時は勿論、死んでからも悪霊と善霊にはボーダーが在り、そのラインは、決して交わることも、入れ替わることなく、そのまま輪廻しているようで、善き者にとっては救いでもあり、逆の者にとっては永久に逃れられない苦しみに感じた。

そして、何よりアブラの存在がポジティブで良かった。ネクストジェネレーションのポテンシャルの高さと多様性を表していて、爽やかだった。

ダニーの時代は、せっかくの能力が生かせない、或いは、発揮できたとしても個の力に留まっていた。これが、切なくて、深い。しかし、アブラは、そのハードルを軽々と超え、自分は勿論、自分以外のシャイニングの力も活用し、この先、大きな事を成し遂げるに違いない、と感じた。

あと、ダニーのパーソナルな部分では、立ち直った後の断酒会で、父親に対し理解を示す体験発表をしたことに、じんときた。ジャックの真意は誰にも分からないが、そんなことは関係なく、一人の人間として、自分のトラウマの克服が、あらゆる問題解決に繋がっているようで、何気に感動した。

同時に、これまで、映画の中では、ほぼ1ミリも、ジャックを擁護する気になれなかったのだが、"シャイニング"の面接シーンや、ウェンディに採用を報告したシーンを思い出すと、確かに、人生を心機一転し、生活の基盤を作りたい。という、家庭人としての、嘘偽りない姿だったような気がしてくる。

少なくとも、あの日、あの時、あの山道を、一人で車を運転し、オーバールックホテルに向かう時の胸中は、家族皆んなで一緒にやり直したい、という純粋な気持ちだったように思えてきた。この発見が、おもしろかった。