silo

ドクター・スリープのsiloのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.0

時を経ても褪せない美学と衝撃を与えた「シャイニング」の世界観とキャラクター設定を改めて凄いなと思う一方で、初めて見た小学生の時に見えてこなかった「拘りと粗さ」を「ドクター・スリープ」を通して色々と考えた。

キューブリックが設定をどこまで描きたかったのかは分からないけれど、彼が描きたかったのが「シャイニング」の演出でキングが見たかったのは「ドクター・スリープ」の演出ということがなんとなく分かった。

象徴的なイメージを物語のなかでぶつけて、視聴者が考える余地、みたいなものをそれとなく美しく配置するのが自分の中のキューブリックで、超能力「シャイニング」の設定やキング作品に見られる最後の教訓的な幕引きや印象的なセリフを、キューブリックが作品全体にもたせたい雰囲気と美的感覚、創りたいイメージに抵触し過ぎない形で冷酷に取捨選択して、調理した結果が「シャイニング」なのかな。

今見ると本当に説明が少ないと言えばそうだし、なんなら超能力がほぼ活躍していない、副設定的にもみえる。

その点ドクター・スリープは「シャイニング」と比較するとプロットを忠実に辿って丁寧にエンディングに帰着する。

良くも悪くも、「シャイニング」、その他キューブリック作品にある唐突で脳内に焼き付けられる様なイメージを期待する人は、「ドクター・スリープ」の中にはそれを見出すことは出来ないのかも

正直自分は「シャイニング」よりの踏み込んだ演出が少しは欲しかったなと思うけど、大友克洋の「童夢」的青年マンガのサイキックバトル設定も嫌いではないので、楽しめる部分もあった。

最後に部屋でダニーとアブラが会話するシーンが好きで、常人には理解できないかもしれないし、理解してもらうのが怖くてたまらなかったシャイニングを持つ二人の、年齢を越えた絆を感じて、友情でもあるし、師と弟子ぽくもある、人によっては姪と叔父にも見えるかも、そんな風にうつるのがなんだか素敵に感じた。
silo

silo