Hotさんぴん茶

ドクター・スリープのHotさんぴん茶のネタバレレビュー・内容・結末

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

結構前(→2019/11/30でだいぶ前だった!)に見たけれど考えがまとまらず、メモのままになっており投稿が遅くなった。それだけたくさんの要素があり、いろんなことを考えさせる作品だったということだろう。

ホラー+サイキックアクション映画だった。ホラー映画だと思って見に行ったけど、思いの他サイキックバトルシーンも面白かった。こういうバーチャル頭脳戦バトル、みたいのはわくわくする。自分が主人公アブラと同年代の思春期の頃に見ていたら、もっと影響を受けていたかもしれない。アブラが頭の切れるサイキック少女だから、憧れていたかも笑

この映画、最終的に悪役より正義の味方の方が怖い。それが不思議な視聴感となっていた。まず主役と準主役は善良な人間なので、感情移入はできた。しかし見ていくと、この2人に凡人には相入れぬ底知れぬ恐ろしさがあることがわかっていく。そのため、親近感が持てない場面もある。主人公たちに対して、こういう複雑な感情になる映画もなかなか少ないんじゃないか。そういう意味で新鮮だった。

なんでこの2人が怖かったか。
理由の1つ目は「正義のためなら、どこまでも残酷になれる点」。例えばアブラがローズの頭の中に入るシーン。この時アブラの目のあたりがのっぺらぼうみたいになり、好きなキャラの髪型でにんまりと笑っていた。好きなキャラに扮するなんて、いかにも十代のアニメ好き少女だ。それなのに、実際やってることは、かなり残酷!!(敵の手が大変なことに…!)このギャップが怖かった。(まあ敵はもっと残酷で許せないけど。)またこの時アブラは相手の頭の中の図書館にいて、彼女の指が異様に早く動いていた。これも、かなり不気味だった。

2つ目が、「超能力自体の底知れなさと、それを操れる強大な力」。例えば、ダン(ダニー)の頭の中の箱が開くシーン。これはなかなかに厳かだったが、同時に不気味でもあった。特にラストの方の、この光景は鳥肌もの。寒々と鬱蒼とした迷路に、巨大な箱がズラーっと置かれるだけでも異様なのに。それが一斉に開くときの音!これが、かなり不穏だった。そんな箱を操ることのできるダンはやはり只者じゃない、と強く目に焼き付いた。

超能力を持つ者の、光と闇も描かれていた。アブラと悪役の少女アンディ、ダンとローズ、それぞれ対比されていた。

アブラは13歳のためか、思春期的な危うさ・手加減のなさがあるように思った。よくいえばまっすぐ、悪くいえば危なっかしい。
悪役の15歳の少女アンディもアブラと同じくらいの年頃だけど、荒れていた上に悪役に目をつけられて道を踏み誤った。まだ子どもなのに、気の毒だ。
同じ能力者でも、人に恵まれないのがアブラと命運を分けたのかも…。

結局悪役の子アンディは悲しい最後だった。悪役とはいえ、悲しい。
アブラはいい子なので、まっすぐ育って欲しい。ダンが支えてくれるかも。そしてアブラのお母さんにも期待が持てる最後だった。
アブラのさらっとした性格のため、この作品が少し暗くなりすぎず済んでいたと思う。

敵の超長生きの軍団たちも別の意味で怖かった。特に人間として終わっているという点で。それなのに仲間たちの死には泣いていて、ちょっと意外だった。でもその直後に仲間の生気を吸おうと群がっていて、やっぱり気持ち悪かった。他の生気を吸うシーンも奇妙で、見てられなかった。でも見ようによっては滑稽で、演者もよく笑わずにできるな、と思った瞬間も笑

なおこの人たちの殺人シーンは残虐で、不愉快すぎた。ここは、ホラーというより猟奇サスペンスになっていた。少年になんてことを!!このシーンが嫌すぎて、二度見る気がしないほどの胸糞シーンだ。
ここまで人間性を捨てて、生きることに執着する意味とは?なにを楽しんで生きているのか謎の集団だった。

そして敵のボス格の、あのちょっとヒッピーみたいな女(ローズ)は結局何者なんだろう。能力者がダークサイドに落ちると、ああなるのかな?
ちなみにローズがアブラを仲間に入れたくないのは自分より上に立たれちゃ困るから?それかアブラが自分よりまっすぐな心を持っており、自分とは相容れないと思ったから?ここは少し気になった。

また人の生気を貯めておくあのボトルが目を引いた。作りがやたら現代チックな点で。そういえば強力なコネがあるって言ってたな。この者たち。裏社会に通じて作ってる品なのかも。(と考えると人間界に仲間がいるということか…。恐ろしい。)

いろいろな死に様が印象的な作品でもあった。

まずは、ホスピスの人たちの穏やかな死。ホスピスの猫が可愛いし、優しいダンとこの猫に慰めてもらって穏やかな最後。悲しいけど暖かな描写だった。

ダンは子供時代にあんなひどい目にあったのに、社会を憎まずホスピスの人たちに安らかな最後を与えられるなんて。とっても優しい人なんだなー。師のおかげなのかな。

一方ダン自身は亡くなる時炎に包まれる。そんな中、子どもに戻りお母さんと会う。激しい最後と思いきや、優しい死に方だったのが印象的。…にしても、主人公が死ぬ話って珍しい。

上に書いたのに対して悪役たちの最後は、看取られて死ぬにしてもなんか反応が激しくて怖そう。まるで処刑されたみたい。この違いはなんだ。

ラストは怖いというより、温かい終わり。
不思議と最後のアブラが母にいうセリフに共鳴した。
自分もおじいさんが亡くなっているが死んだ気はしてない。見えない世界にいてくれるという気持ちだから。

ラストに向かうにつれて、前作シャイニングとのつながりが強まるのには興奮した。
クライマックス、ついに展望ホテルに行く主役たち。前作を見てる自分は、ついに来たか、と思った。
展望ホテルに近づくときの荘厳な音楽が、やっぱり怖い。

ダンが、父とバーカウンターで向き合うシーンは切ない。シャイニング=酒なのかな?シャイニングに飲まれると悪の世界に導かれるのかな。

あの風呂場の女性、前作では美人な若い人のふりして登場したはずなのに、今作では全然老婆であることを隠さないなー。もう正体知られたからいいや、て感じ?笑(変な言い方だけど、身内的な感覚?笑)

見たあとじわじわと感想が湧いてくる。そんな面白い映画体験だった。