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マチネの終わりにのこーたのレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
3.7
原作読んだ上での鑑賞なので、どうしても比較になってしまうのだけど全体的にキュッとまとめられてはいた。でもやはり失われる部分も多いなあ。
さすがにバグダッドには行ってないけども、パリを舞台に原作を再現。フィリップ殉職キャラになっていた…。薪野の決定的な台詞である「もし洋子さんが地球のどこかで死んだら僕も死ぬよ」はやはり小説の文脈があるからこそ重奏的な言葉になるけれど、薪野にそう思わせる過程までは尺的に厳しかったのであろう少し唐突味を感じる。
そして原作とは対照的に、洋子はPTSDを、薪野は自らの不振のことをお互いに打ち明けている。映画の尺の都合上、二人の距離を急速的に近づけるためには仕方ない展開だったのだろうけど、やはりお互いに知らぬが故のすれ違いもあったのでうーん。また、本来終盤で久々に再開した洋子の父から言い渡される真実(イェリッチが脅迫されていたこと)を母親があっさり教えてくれるので父母キャラは薄かったなあしゃあなしか。
なんと言っても終盤、本来は薪野の復活ツアーで早苗と洋子が鉢合わせをし、洋子に来ないでくれと頼む&洋子が名推理で彼女と察した上で大人に態度で引き下がるものだったが、本作では早苗が自ら打ち明けてしかもコンサートに誘うというよく分からない流れにはなっていた。そして薪野夫妻は衝撃の事実を打ち明けられたのに二人で普通に過ごしているのもえらくすんなりだなあと思った。
とまあ書けばキリがないのだけど、原作からどこを削るか、と言う話になったときに、バグダッドのテロなど宗教的政治的な部分は仕方ないとしても、やはり悪役早苗は振り切ってほしかったなあ。この作品のカルマはすべて彼女が負っていたのに、ちょっと可哀想な雰囲気出してきた。キュッと縮めるとたしかにこういう話なんだけど、フォーカスすべき点(主に洋子と早苗側の葛藤など)は見所としてやり切ってほしかったなあという気持ち。
個人的には洋子の脳内イメージ完璧に満島ひかりだったので、そのバージョンも観てみたいものだった。福山は完璧。
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