YACCO

マチネの終わりにのYACCOのレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
3.5
この映画の原作となる小説が発売された当時、多くの女友達からこの小説をすすめられた。
誰もがとても面白かったと口をそろえて、目を潤ませてすすめてくれるので、手に取った。それから程なくして映画化するとネットニュースで読み、キャストを知って映画に興味がわいた。どこか現実離れしたこの恋愛小説もこのキャストなら見れるかもしれないと思ったのだ。

原作では、著者が知っているあるふたりの物語として、まるでどこかで現実の世界で起こったことかのように語られるこの話は、映画ではそのくだりはなくなっていた。他にも映画化において変わった個所があったように思う。(そのなかには、私としては変えて欲しくないものもあった…)
前述したような現実離れした設定(パリと日本の遠距離恋愛、ふたりが現実に会うのは3回だけ)も、映画の世界観と福山雅治と石田ゆり子というキャストをもって補えると思ったのかもしれない。その目論見はあながち間違っていなく、役者そのものがもつ説得力というものを今作では感じた。キャストが原作の物語をまさに体現してくれたと思う。(福山みたいな人にあんなぐいぐいこられたら、気持ちが揺れるのもすごくよくわかる 笑)
福山雅治と石田ゆり子のふたりはもちろんのこと、福山演じる蒔野のマネージャー三谷早苗演じる桜井ユキも良かった。この物語のかなり重要な部分を担うこの役を見せてくれたと思う。舞台挨拶で彼女が早苗の気持ちがよくわかると言っていたけれど、たぶん彼女は早苗を全肯定して演じ切っていたのだと思う。

そして、もうひとつ。蒔野の演奏するクラシックギターの演奏が印象的だった。このために、福山さんを起用したのかと思ったくらい。演奏している姿が美しく説得力があった。劇中歌の「幸福の硬貨」も映画にあっていて(この映画においてこの曲はとても大切なものだと思う)、とても良い相乗効果を演出してくれた。

それにしても、原作を読んだ時も思ったけれど、この世の中はやはり欲しいものは欲しいとなりふり構わず手を伸ばし、手に入れようとしたものがそれを手にすることが出来るのかもしれない。ただひたすらに互いをこれ以上ないくらい大切に思い合っていたとしても、目に見える形では成就しないものなのだ。誰かをそこまで強い気持ちをもって思えることはすごいことだし、それ故に何があっても消せない思いがあることは、読む側、見る側の心を濡らすのかもしれない。
とはいえ、二転三転するようだが、やはり思い合っても見える形で成就しないことは、辛い。無駄に年齢を重ねるとそれはある種の重みをもってくるから、この手の話は厄介極まりないと思うのである。
YACCO

YACCO