あらすじ
フランスでジャーナリストをしている小峰洋子は、日本に一時帰国した際、友人でありレコード会社の社員の是永慶子に誘われ、クラシックギタリストの蒔野聡史のリサイタルを観に行った。
40歳を超え、自身の演奏の意味を見出だせなくなっていた蒔野は、楽屋挨拶の際に出逢った聡明な洋子に一瞬で心惹かれる。
その後洋子はフランスに戻り、パリで起こったテロについて、警察に喰って掛かるほどに熱心に取材を行っていた。
取材データの編集のために会社へ戻り、“テロ現場を目撃した”という人物に会うために下に降りてきた同僚と入れ替わりでエレベーターに乗り込んだ瞬間、同僚の目の前で爆破テロが起こった。
洋子は、幸いにもエレベーターのドアが閉まっていたことで被害を免れたが、これによって心に深い傷を負う。
一方、蒔野は洋子がエレベーターで残したリポート動画を観ていた。
そこに、洋子からのテレビ電話がかかってくる。
蒔野が何度もメッセージを送っていたのに、返信出来なかったことを詫びる連絡だった。
そこで洋子は、自身がPTSDで休職していることを告げ、工事の音にも心底震える洋子の姿を観た蒔野は、洋子を笑わせようと色々な話をする。
そのおかげか、それから少し後には無事に外出出来るまでに回復した。
師匠・祖父江誠一の誘いでマドリードでのリサイタルに客演で参加することになった蒔野は、その合間を縫ってパリに洋子に会いに行く。
そこで、洋子から自身の演奏に救われたと告げられた蒔野は、勢いで洋子に恋い焦がれてることを告げる。
20年も側にいる男性と婚約している身であり、初めは有り得ないと突き放していた洋子だったが、自身の心の底から湧き出る感情に気付き、“答えは、マドリードの公演まで待ってほしい”とだけ返す。
しかし、公演の夜に洋子は現れず、蒔野のスマートフォンには洋子から“パリに来てほしい”というメッセージが送られていたーーー。
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感想
よく作れたなと驚いたくらい、色んな意味で贅沢な作品だった
パリとニューヨークでの長期のロケーションを行い、全編35mmフィルムでの撮影
ひと昔前であれば、トレンディ映画で散々やってきただろうけど、今の時代こんな条件で映画を作ること自体がすごく貴重
東宝には是非本作の35mmフィルム上映を行ってもらいたい
こんなフィルムらしい深い黒は、ちゃんとフィルムで観たらどれだけ素晴らしいものになるか
内容の感想としては、とても大人の恋愛物語
“過去は変えられないが、未来によって過去は変えられる”という言葉がとても深い
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福山雅治と石田ゆり子以外のキャストは、基本2人の引き立て役みたいな扱いだけど、その中でも一際目立ったのは、蒔野のマネージャー・三谷早苗を演じる桜井ユキ
2人の人生を大きく変える、非常に重要な役
最近でもドラマ『G線上のあなたと私』の久住先生役で存在感を放っている彼女だが、この作品では蒔野の為に全てを捧げる女性を演じる
どことなくファンタジー性を感じる本作の中で、彼女の出るシーンだけがどこか人間らしい血の通った感触があった
すごく上質で贅沢な時間だった