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アルキメデスの大戦のpikaのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
3.5
予告を見たときに設定やストーリーには何も感じなかったが菅田将暉が出ていて且つその演技が大好きな「帝一の國」を彷彿とさせるものでこれは私得案件かもしれんと楽しみにしていた。
役者の演技バランスが若干チグハグで(声量の違いのせいもある)カットのタイミングも妙に間延びしているし(山崎貴らしいと言えばらしい)それぞれがきちんと仕事をしているにも関わらず台本に書かれたものをカメラの位置を含めた演出プラン通りにやりこなして見えてしまう点や途切れることなくファーファーと鳴り続ける劇伴など難点はあちこちにあるが、菅田将暉がアメリカ行きの船から波止場を見下ろして想起するイメージのスイッチング、ラストの展開、國村隼の囁くような話し方、ちょい役なのに安定した小日向文世、わざとギャグ寄りに笑かせにかかる舘ひろし、最終決議のシーンでの素晴らしい田中泯(あのシーンは菅田将暉を食っている!)など見どころはあった。

それ以上に何よりとにかく菅田将暉が素晴らしい。菅田将暉の天才キャラの演技は見ていてとても心をくすぐられた。最高。
その良さを最大限活かしきれているかと言えば物足りないことこの上ないがそれでも素晴らしいからいいのだ。この菅田将暉はこの映画でしか見れないのだから。演出がどうであろうとその存在を映画に切り取った価値は多分にあった。

後半の展開はお話として良くできていて面白い。オープニングも劇中様々なところで思い起こされるように生きている。調べれば原作は漫画とのことで面白そうであるし、この奇抜な創作が原作物であるという点で当然かくあるべきとの存在感で作品の良さを引き立てている。
後半は思想が明後日の方へ舵取られてしまったように見えたが史実を前にしてよく盛り込んだなと。中盤は現代でも地続きの政治社会問題を、少し滑稽なほど丁寧過ぎたキライはあるが、こういう歴史ファンタジー話に、前半の核として印象付けたところは興奮した。
日本のドラマに疎い私でも日本ドラマの見本市を見せられたような過剰で丁寧な説明と演出であったが途中で投げ出すほどではなかったし最後まで楽しく見れたし全ての残念ポイントを補って余りあるほど菅田将暉が良かったので満足した。

二週間(正確には違うが)がハイライト。
大阪の終わり頃などその天才ぷりを表現したシーンが凄く良かった。数式CGをここぞというポイントで良くぞ絞ったなと。最上でなくても充分にツボを刺激されました。グフフ。
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