EDDIE

泣くな赤鬼のEDDIEのレビュー・感想・評価

泣くな赤鬼(2019年製作の映画)
4.2
“努力は報われる”
無責任な言葉が重くのしかかる。
甲子園を目指す高校野球、難病におかされた10年後の現代。過去の後悔ややり残したことと折り合いをつけ、一歩前進する。過去の伏線が現代とクロスオーバーする瞬間、涙腺が堪えられない。
重松清原作はいつも優しく残る。

劇場で観たかったけど見逃してしまった一本。気づけば2年が経過していました(U-NEXTでもこの1年ぐらいずっとマイリストには入っていました)。
2020年には同じ重松清原作の『ステップ』が自分のランキングで年間2位に輝いたぐらい大好きな作風で、本作は監督は違うもののやはり物語の持つ優しさは継承されているなという印象。
どちらも妻役で川栄李奈が配役されているというのも作品の雰囲気に合致しているというのもあるのでしょうか。

本作は堤真一演じる高校教師の小渕隆が主人公。通称・赤鬼。その名の通り、大変厳しく怒号を飛ばす野球部顧問という立ち位置でございます。
もう1人の主人公が柳楽優弥演じる小渕の元教え子である斎藤智之。通称・ゴルゴ。高校時代にゴルゴ13作者のさいとうたかを氏からつけられたあだ名のようです。

才能溢れる斎藤は甲子園を目指す公立高校にとって期待の1年生。強豪校との1年生試合で活躍を見せ、小渕も強い期待を抱きます。
まぁ高校野球って頭坊主に丸めるとか、コーチが体罰的な行為をするとか、とにかく前時代的な印象が拭えないところがあるんですが、本作の小渕の野球部も同様です。
とにかく精神論で怒鳴りつけてくるし、反抗すればキレるし、なんだかあんまりいい気がしないんですよね。

だけど、それから10年の時が経った時、自分の元教え子が立派に育っているように見えて、それから少しの交流をきっかけに自分自身を見つめ直していくきっかけともなっていくわけです。
逆に教え子の斎藤についても同様で、若くして末期がんを患ってしまい、過去やり残したことと向き合う必要性に駆られていきます。
この2人の後悔が、それぞれが当時向き合えなかった後悔と合致して、様々なシナジーを生み出していくんですね。

所々涙が我慢できないシーンも多くて、よくある難病ものではあるんですが、“勇気”とか“諦めない心”とかそんな説教じみたことを説くわけではなく、生き残った人間とこの世をさってしまう人間がどう振舞っていくかというところに焦点が当てられているのが好印象でした。
これ劇場だったらボロボロ泣いていただろうなぁ。

※2021年自宅鑑賞249本目
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