ひろぽん

泣くな赤鬼のひろぽんのレビュー・感想・評価

泣くな赤鬼(2019年製作の映画)
4.1
かつて甲子園を目指す強豪校で熱血指導ぶりから「赤鬼先生」と呼ばれていた高校教師・小渕。だが、進学校の野球部の指導をする彼は、以前のような情熱を持てずにいた。そんなある日、彼は病院でかつての教え子でゴルゴの愛称で呼ばれていた斎藤と再会することに。彼は末期がんで余命半年と宣言されていた。小渕は独りよがりな指導でゴルゴを追い詰めてしまった過去を悔やみ、何か手助けできないかと考えはじめる。熱血教師「赤鬼」と、才能を持ちながら努力をできず逃げ出してしまった少年の再会を描いた物語。


高校時代には野球の才能があったのに努力ができずそれでも野球が上手ければいいと思っていたゴルゴ。典型的な昭和の根性論全開スタイルの熱血教師赤鬼。

捕れないボールにでも飛び込んで根性を見せて欲しいと願う赤鬼と、それを意味のないものだと思い泥臭いプレーを嫌うゴルゴ。考え方の違いで衝突したまま部活も学校も辞めてしまったゴルゴと赤鬼のすれ違った2人が時を経て病院で再会することになる。余命宣告された元教え子のために教師として過去の後悔を含め何かできることがないか模索していくというのがメインのお話。

才能のないやつが努力したって無駄だという能力至上主義のゴルゴの理論は納得してしまうくらい核心をついてる部分があった。

チームスポーツである以上才能のある奴には皆の手本となって欲しいし、それが爆発的な相乗効果を生みチーム全体の士気が上げるという狙いが赤鬼の指導にはあったのではないかと思う。

自分も元高校球児だったから2人の言い分と気持ちは分かる。それでも、生徒と監督という関係で本気で本音を話せる二人の関係性が羨ましいと思う。そういった意味でゴルゴを気にかけすぎて外野からゴルゴのライバル役としてコンバートされた和田が1番可哀想な役回りだった。高校時代に先生のコマとして使われてたって和田本人も認識して理解していたのが切なかった。ゴルゴも和田も赤鬼先生に認められて欲しいだけだったんだろうな。


2時間の尺の中で高校時代の描写がしっかり描かれているのが良かった。正直高校時代の人間ドラマの部分は脚本もよくできていて本当に面白いなと思ったけど、物語の後半あたりから徐々に失速していって泣かせに来るような演出が多くて感動は多少あったけど泣けはしなかった。

個人的にこの作品で良かったと思う点は、野球のシーンがリアルに描かれていたところだと思う。メインの演者以外ちゃんと野球経験者を抜擢していた点が本当に素晴らしかった。それと、ゴルゴの高校時代を演じた役者の演技が圧倒的に凄くてとんでもない天才現れたなーって思ってたら堀家一希という俳優さんだったんだね。初めて見たと思ったら他の作品でも何回か見てたけど全然気づかなかった。

柳楽優弥のドロップアウトした役の雰囲気はとても良かったのだけど、死に直面した闘病生活をしているとは思えない健康そうな身体が残念だった。彼の良さを活かしきれてない気がする。悩んでる姿を演じさせたら右に出る者がいない堤真一の表情と、元アイドルとは到底思えない川栄李奈の演技は素晴らしかった。何よりも堀家一希という俳優を知れてよかった作品。

高校を卒業したあとに無性に野球やりたくなる気持ちはよく分かる。何か心残りがあると尚さらそう思うんだろうな。昔野球が上手かった憧れの先輩がゴルゴの様に部活も学校も辞めて夏の大会とか観にきてたけど、よく頑張ったとか言いながら泣いてけどその涙は俺らへ向けられたものじゃなくて自分が最後まで続けることができなかった後悔の涙なんじゃないかと…この作品と重なるものがあった。
部活を辞めて後悔してる奴はいるけど、最後まで続けて後悔してる奴は見たことない。
ひろぽん

ひろぽん