KUMI

岬の兄妹のKUMIのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
3.4
どんな胸糞映画よりも残酷で、リアル。
足に障がいのある兄と、自閉症の妹。
物語が進んでいけば行くほど絶望的な状況で、「妹に体売らせる兄」とだけ
見ればとんでもないクソ野郎だが生きるためにはそうするしかなく、
いくらか弱い女性とはいえ、成人女性のフルパワーで噛み付いたり叩いたり、
鎖をつけても逃げ出し勝手な行動しまくり。
兄一人で生きていく分には十分だがこの足枷があるとなると普通の生活なんて不可能。いっそ殺してしまえばいいものの愛する家族でもあるので踏みとどまってしまう。
また、売春相手は様々で、ヤクザらしき男や、小人症?の男性や
妻に先立たれたお爺さん、思春期真っ只中の学生など…
これがまたリアルできつい。

全体通して一番苦しかったのは兄が夢の中で無邪気に走りまわったり遊具で遊んだりしているシーン。
夢の中では不自由な足も自由自在に動かせて、奇跡でも起きたんじゃないかと本人は思ってしまうが、目が覚めた時には目の前にある恐ろしい現実。

夢の中で子供たちのまじり遊具で遊んでいたのは、幼い頃から自閉症の妹の世話係として生活するしかなく、子供時代存分に自分のやりたいことができなかったからではないでしょうか。

ラストシーンについて色々考察はあるものの、普通に考えるとまた売春の客からの電話。一度体を売らせて楽にお金を稼いだ経験があると、もう不自由な足を動かしながらの肉体労働には耐えられないと思う。
最初と同じシーンが繰り返されてることから無限ループ的な終わり方だったと感じた。
一度負の連鎖から抜け出せてもまたどん底へ向かっていってしまう救い用がなさすぎる作品でした。
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