僕は、これをありきたりと言いたい。
障害を持った妹と、足の悪い兄の生活を描いた本作は、貧困ゆえの過ちを田舎町を舞台に映し出す。
彼らのする行動が倫理的に正しいかと言われれば、大抵の人は首を横に降るはずだが、鑑賞時、彼らに寄り添ってしまわざるを得ない観客は、自分の中にある正しさに疑問符を投げかけるだろう。
それは、自分の過去の過ちを回顧してか、共感力、同情か。
ただ、こうした作用は、良くも悪くも、ありきたりと言えよう。
昨年、カンヌを受賞した「万引き家族」を想起しなかった者は少なくないだろうし、ある種の純度の高い作品は、皆、個人の価値観を問い続けている。
だから、本作はありきたりでつまらないものなのだと言うと、そうではない。
妹、まりこが日々見せる笑顔、そんなとてもとても平凡でありきたりなエッセンスが、誰もに共感させる生の尊さを描いているのではないだろうか。
二人の生き方の不器用さやそもそものインディペンデント作品らしい粗さ、その全てが愛おしく感じられる時間だった。
衝撃的な展開だからこそ、普遍的。
生きるというありきたりなテーマの特別な作品。