観客をシュールな独特の世界に誘い、そして同時に罠に嵌めてきたシュバンクマイエル。
甘くて可愛いデコレーションケーキのような毒物と、シュールでグロテスクな笑いで我々を魅了してきた彼が最後に仕掛けた罠はその世界の裏側をすべて曝け出して魔法を解いてしまうこと。
妻であり、共同制作者でもあるエヴァを失ってからの二作品は寓話というよりも、シュバンクマイエル自身のことを表しているようにも感じられる。
どこまでが現実でどこまでが虚構か判らなくなる生活。
憧れを形にしていくことと日常を蝕まれる恐怖。
それはシュバンクマイエルの制作の日々そのものだったのではなかろうか。
そして最後の最後で本当にやりたかったテーマで映画を作りつつも、インタビューで夢分析をして伝えたいことを煙に巻き、ドキュメンタリーでネタバラシをしてシュバンクマイエルの世界に陶酔していた人々を大いに突き放す。
所詮は制作物は制作物です。
物語は本を閉じれば終わりです。
これで終わりですけどなにか?
とでも言いたそうなシュバンクマイエルの顔が憎たらしくもあり、とてもらしさに溢れていて喝采を贈りたくなる。