蟬丸

隣の影の蟬丸のレビュー・感想・評価

隣の影(2017年製作の映画)
3.7
隣人トラブルのお話。

ポーチの陰になっている木を切るか切らないか、という些細な話から始まる悲劇。誰かに対する疑念や思い込みは段々と膨らんで、やがて確固とした事実と同じくらい動かしがたいものとなってしまう。たとえそれが単なる想像に過ぎないとしても。
人間の想像力は諸刃の剣だ。現実に起こっている多くの対立は実体のない概念上のものでしかないのかもしれないが、それをきっかけとして実際に人が傷つき、悲しみ、ときに命を失いさえもする。しかし何かを想像することは同時に人を癒し、救う力もあるということを忘れてはならない。

汝を愛するように隣人を愛することは昔に比べて難しくなっているように思う。必要なのは信じるということで、みな安易にこの「信じる」という言葉を使うが、実はこれはすごく難しいことだ。コミュニケーションの齟齬の描写は見ていて辛くなるが、それだけ理解できるということでもある。かなしいことに。
蟬丸

蟬丸