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新バビロンのyuraのレビュー・感想・評価

新バビロン(1929年製作の映画)
3.6
大学の課題で鑑賞🎞
サイレント・シネマ・デイズの最終日。
初の国立映画アーカイブ…!楽しかった~
これから頑張ってレポート書きます…。
生演奏のフルートとギターの音も心地よい…!!

made in ソ連なのにフランス舞台の映画っていうのが不思議~(と思ったけど共産主義なんだもんそうなるよな、、賛美したくなっちゃうよな、、)時代はパリ・コミューン。1871年3月18日 – 1871年5月28日という短命な時代だったのを世界史で習った気がする。これは予備知識がないと深堀できないと悟ったのであとで勉強し直す。
タイトルの「新バビロン」はヒロインのルイーズちゃんが働く百貨店の名前。名前の新バビロンからも新バビロニア王国とパリ・コミューンの時代の関係を見出そうとしたけど分からない。アッシリアを包囲して陥落させたりとか、、そういう歴史との関わりなのか、、??わかんないけど!!
百貨店というもの自体このパリが発祥らしく第二帝政初期の1852年にはブシコーという夫妻がパリに新しい形態の商業施設「ボン=マルシェ」を開店、それが大成功してパリは近代的なブルジョワ都市として繁栄していた。

Vive la commune...
コミューン万歳。
ポスターにもなっているこの場面はこの作品を象徴するような印象的なシーン。
パリ・コミューンの中でも血の週間と呼ばれる戦闘では3万人もの人々が亡くなり、コミューンは解体したと言われます。

身分差の描き方。

新バビロンの中
華やかな日傘がくるくる回っていたり、扇子のレース模様の繊細さは白黒でもその豪華で貴族的な雰囲気が感じられる。
ブルジョワ階級の人だかりがドレスやレースの取り合いを滑稽にしている、キャバレーでダンスをし美酒と淑女に酔い、一方で労働者階級の人々の暗い生活を対比的に描いている。
かなり窶れた姿で洗濯をする女性や黙々とミシンで服を縫う女性たち、街路で飢えと寒さの中寝泊まりする人々。それでも戦争代を払うのはブルジョワではなく労働者階級であり、彼らはそれを高みの見物をして楽しむだけ。

食べ物で距離が縮まる。
ルイーズがジャンに与えた一切れのパン。
そして1杯のミルク。
両手で大事そうに食べるのがかわいいとか思ってしまう笑

唐突に、力強い。想いが溢れかえって咄嗟に身体が動いたようなそのキスシーンをカメラに写している時間はとても短い。
その間に石畳に映る馬に乗った兵士たちの列の影やラッパを吹く男が映される。戦争は待ってくれない。容赦なく恋人たちを引き離す。そういう現れなのかもしれない。ジャンはルイーズにキスをした後一言も言葉を交わさずに去ってしまう。引き離されるとわかっているからこその心が苦しいのかもしれない。

ガーゴイルや鳥の石像がパリを見下ろしているシーンが教会は何世紀にも渡ってパリにあり続けてきたわけで、頬杖をつくガーゴイルが眺める先は社会が目まぐるしく変化するパリ。もしかしたら中世からの時代の流れに想いを馳せているのかも…。

社会主義になってからの労働者階級の対比。
かなり楽しそうにコミカルな動きで仕事してる。洗濯婦さんたちの豪快な泡の飛ばし方、仕立てさんたちのミシンの速さ、そして彼女達の笑顔。「オーナーのためでなく自分たちのために仕事をする」その喜びを全面に出している。

ルイーズの強い女性像。
死刑宣告の前に「売春婦だったと言え」と言われた直後の激しい殴り方。死を覚悟しても高潔を守った強さがかっこいい。力強く純粋でまっすぐな瞳。大砲を命懸けで守る女性たち。自分たちを撃ち殺してもいいという本気。

雨の表現。
石畳を濡らす雨。光が指していて雨の濡れた質感が美しい。わかりやすい隠喩だけど人(たぶんジャン)の心情の現れ。でも反対に亡骸に降り注ぐ雨は命を懸けて戦った人々に対する労いのような慈雨のような感じにも解釈できる。

ラ・マルセイエーズ🇫🇷
歌はやはり人々を団結させる重要な存在。
この時代が舞台の映画は「レ・ミゼラブル」しか観てないけど、「民衆の歌」のシーンでも歌によって民衆は団結し、人々の感動を誘う。
この作品は、かのドミトリー・ショスタコーヴィチが初めて映画音楽を作ったというだけあり、音楽の使い方はとても効果的。ショスタコのフルオケの演奏でも観たいな〜今回はきっと元のメロディは同じ、その楽譜をアレンジしているのだと思う。でも戦闘シーンの激しい戦火を激しいギターの音が表現したり、はたまた冒頭のコミカルな雰囲気を軽快に引き立てたり、フルートの不穏な音が人々の心の乱れを表していたり、ふたつの楽器だけで音楽の幅広くて素晴らしかった…!!ヴィブラートたっぷりの低めのフルートの音、、私大好きなんですよね。

百貨店にいるカンカンダンサーたちは豪華秀麗な衣装にはっきりとしたメイク。ギラギラと目に宿る光は「民衆を導く自由の女神」のような姿を思わせる。でも多分ブルジョワ階級にとってはいい存在ではないよなだから違う気がする。女神とかそういう、??が、パリの危機を知ると呼応するように力なく項垂れる。
ブルジョワの狂いぶり。
早いカメラワークと相まってより狂ってる。
もはやカオス。

さっきまで隣にいた愛する人が今はもう死んでしまっている、そういう若いカップルのシーンもあってとても残酷。

ルイーズの最後の満面の笑み。なんでこんな笑ってるの、、?ってちょっと思ったけど最後までかっこよい。
ラストシーンの共産主義に寝返ったジャンは本当に かっこいい。これからルイーズの死を背負いながら強く生き抜いていって欲しい…。そんな覚悟も見える、。vive la commune!!!

戦争の見物を終えたブルジョワたちは皆ジャンを祝福するが、彼の目はずっと虚ろ。捕虜となったルイーズを探し求めて行く彼の目には光がない。やっと再開したところは裁判所で、ルイーズは死刑宣告、ジャンは墓を掘ることを命じられる…。

新バビロンの中にあったちょっと怖い顔のマネキンも終盤は火に飲まれていく、バリケードになりそうな大きいもの、重いものを全部広場に集めて、ブルジョワがこぞって取っていたレース地のリボンは止血に使われる。

クジミナちゃんほんとに綺麗だし
記者の子がモブだけどすごい美しい…!!推し。
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