おこのみやき

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのおこのみやきのレビュー・感想・評価

4.5
この映画の優れている点は、日常と戦争を対比して描くのではなく、それらが共存している状態を描いていることと、どうしても「夏」のイメージが先行する戦争を四季を通して表現していることだ。

また、アニメーションではセリフで全てを語ってしまうか、身振りが大袈裟になってしまいがちだが、本作ではセリフと身体言語のバランスが非常に良い。身体の感覚的な部分が生々しく描かれている。

さらに、こうの史代の原作をうまく翻案しつつ、彼女の類稀な漫画表現(たとえば口紅で線を描く)をアニメーションで実践しているのもすばらしい。

ただ、約3年ぶりに鑑賞したが、すずが思っていた以上にいびられていて少々不快になる。すずがそれを理解していたか、スルーしていたかに関係なくかなり残酷。
だからこそ、終盤のすずが感情を露わにするシーンでカタルシスが生じるのかもしれない。