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この世界の(さらにいくつもの)片隅にのefnのレビュー・感想・評価

3.8
 りんの周辺を掘り下げているので人間関係や日常は通常版より密度が高い。のだけれど、編集や主題がやや混乱気味になっていた。特にりんの存在は大きくて、全体の記憶の問題(江波の兎波、右手の喪失と記憶の錯綜)に影響している。
 原作では娼館に纏わる消したい記録と記憶の器と対になっているのだが、その補足がないのでどっちつかずの中途半端な印象が残った。
 誰かが娼館の事情が詳しく描いてない、と言ったが昭和の風俗として、海軍の施設に隠れた存在として認識すればそれで十分だと思う。(描くなら描くで主題に踏み込んでほしかった)
 個人的には通常版の方がメリハリが聞いているから好み。なぜ広島に帰りたいと願い、また空が光った途端に呉にいたいと思った理由もはっきりしている。通常版の方がより主観的だが、その分主題もはっきりしていた。
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