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黙ってピアノを弾いてくれのarchのレビュー・感想・評価

黙ってピアノを弾いてくれ(2018年製作の映画)
4.0
「普通の世界なら俺が演じなくとも音楽を聴いてもらえた」

その言葉は音楽業界、ひいてはエンターテインメント業界の俗物的な本質を見事に捉えた経験者からしか生み出せない言葉だと思った。

狂人的振る舞いで観客を湧かせてきたチリー・ゴンザレスの半生を追ったドキュメンタリーで、何故彼は狂人を演じたのか、そこから転じて「Solo Piano」という静の音楽に至ったのかが描かれる。
自分のパブリックイメージとの不一致に苦悩しながら、自分の音楽を追求していく姿は面白く、そこから抜け出して現在の両者両得なスタイルに至ったラスト当たりは感慨深いものがあった。

とにかく楽曲やライブパフォーマンスを観ているだけで最高な作品でもあり、Bロールとして挟まれる過去のライブ映像だけで、作品の成功している感じがして、ずるいなぁと思ってみていた。
中盤の真っ黒な部屋でのソロピアノ等で、象徴的な画を入れることで方向転換する構成も良かった。
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