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黙ってピアノを弾いてくれのkassyのレビュー・感想・評価

黙ってピアノを弾いてくれ(2018年製作の映画)
3.5
試写会にて。

Daft Punkのアルバム参加や、アーティストのプロデュースなども行うモントリオール出身のピアニスト、チリー・ゴンザレスのドキュメンタリー映画。

ピアニストというとあなたはどんな人を想像するだろうか。おおよそ彼はピアニストの枠からはみ出す人間であろう。
彼はピアニストでありながら、アートの世界に生きるエンターテイナーである。
言動や行動は過激的で、彼のアートを表現する手段が現在はピアノなだけであり、その出自はパンクにラップを繰り出す前衛的な集団であった。その時の彼はめちゃくちゃ喋りまくっていてうるさいのである(ラップなので…)
しかし、彼はそんな活動とは別に、それまでのラップとは打って変わって、原点回帰とも言うべき静かなピアノソロを演奏し始める。それはジャズなどの要素も含む、とてもアンビエントでオシャレな音楽。前半の彼からは想像も出来ないほどのギャップである。

彼は自らを音楽の天才とのたまう。
演奏の技術は一流ではないが、彼はエキセントリックな道化を演じながらも、音楽はまっすぐで正直だ。
ただひたすらに自らの内面を表現する彼から、目が離せない。
激しいラップと静かなピアノ。
そのどちらもが彼であり、彼ではないのかもしれない。そこが得体の知れなさをよく表している、面白いドキュメンタリーだった。

彼の事を知らなくても、彼の事をもっと知りたくなってしまうだろう。
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