三隅炎雄

拳銃無宿 脱獄のブルースの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

拳銃無宿 脱獄のブルース(1965年製作の映画)
4.2
オープニングが『東京流れ者』みたいだが製作はこちらが一年前。『続東京流れ者』がそうだったように、森永健次郎が撮る渡哲也は後のニューアクションの血の匂いがする。特にこれは藤竜也や(監督お気に入りの!)前野霜一郎と一緒に組織に反逆する若者たちの話だから、もう既にニューアクションかと錯覚するような筋書きだ。ただし青春はまだ気だるさを纏うことはない。熱く一途だ。
ワイドとスタンダードの画面サイズの切り替え、監督がこだわる二重フレーム画面のヴァリエーションとしての分割画面、少人数化され抽象化された組織像といった人工的な演出と、不安定で生々しい記録映画的カメラワークで捉えられた青春像が同居して、同時期の日活アクションのどれとも似ていない不思議な魅惑の映画がここにある。脱獄シーンは大胆な省略で、一瞬何が起こったかと驚くだろう。妙に日焼けした殺し屋小池朝雄の怪演、郷鍈治に漲る殺気、菅井一郎と二本柳寛の親分二人も堂々たる悪党ぶりで惚れ惚れする。最後は棒読みだった渡哲也が観客に向かって、思い切りドスを効かせ、ひとりの無頼の旅立ちを宣言してみせる。

脚本星川清司、石森史郎。日活アクションにつきものといえばそうなのだけれど、女優陣の存在が薄いのが惜しい。男たちはこれはもう文句なくみな素晴らしい。
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