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mid90s ミッドナインティーズのshuのレビュー・感想・評価

3.2
青い。
未熟。
幼い。

そう一言で片付けてしまうのは容易いけど、自分自身に根付く思想とかスタイル、カルチャーというのは環境に因るところがかなり大きいということを改めて見せつけてくれる映画。

何歳でこの映画を観るかによっても感想は結構変わってきそうだけど、自分はきっともっと幼い頃でも、こういう「ワルイヤツラ」が嫌いだったから「ケッ」と思いながら観てたかもしれない。
狭い世界でつまらないやつらとつるんでつまらないことをやってゲラゲラ笑うことでしか退屈を紛らわせない、田舎のヤンキー的なコミュニティ。
でも程度の差こそあれ、若い頃って多かれ少なかれみんなそうなのかもしれない。
他のやり方を知らないし、逃げ方も知らない。
だから置かれた場所で咲くために、自分を適応させる方に変える。
どんなコミュニティでも、そこにしか居場所がないならそこに適応するしかないし、そこで「大したやつだ」と言われたら嬉しくなってしまうのは人間の弱さかもしれない。
「どれだけワルくてクレイジーなことをできるか」
という度胸試しのような手法で格付けが決まるしきたりはどこのヤンキー的コミュニティでも共通なのかもしれない。寿司チェーン店で馬鹿をやるやつらとか。

だからこの映画の中でも外の世界を志向しているやつが一番俯瞰で物事を見れていて、一番大人に描かれている。
何となくワルくて自由な奴らに憧れてその世界に飛び込んで少し大人になった気がしているうちはまだまだ子どもで、そこから卒業した時初めて大人になる。
それを自覚しているあいつは、そのことに気づかせてくれようとしていた。


何となくワルくて自由な奴らがカッコよく見えて、そこに混ざれた自分はクールで大人だ、と思う未熟さ、
見下してたやつが自分よりも先に「認められ」て焦る未熟さ、
夢を語りはするが、それを現実にするための具体的なアプローチは特にせず、いつか、と言いながら周りの顔色を窺って流され続ける未熟さ、
真剣に何かを頑張るなんて馬鹿らしくて、今が楽しければいいんだよ、と言いながら低い方に流れ続け、周りが大人になろうとすると内心焦って不貞腐れる未熟さ、
そんなやつらの未熟さを俯瞰できているが、愛着と恩義ゆえに抜け出しきれない未熟さ。
それぞれの未熟さが描かれていて、ただそれを単純に"悪"だとか言えるものでもなく、通過儀礼のように、一度は踏み込んで、いずれは去っていく場所、去らなければならない場所として描いているのが誠実でリアルだと感じた。
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