ーcoyolyー

mid90s ミッドナインティーズのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

3.6
センター試験を受けて(北海道の冬休みは長いので)三学期の始業式というかセンター試験の解説受けるために学校行く準備しようとしてたらテレビから一つの街が瓦礫に埋もれてる映像が延々と流れてきていて、それが日本だと、神戸だと気付くまで随分時間がかかったこと、その後神戸大の倍率が途中経過でやたら低くて最終的には跳ね上がっていた受験生心理の乱高下に私文コースの人間だから他人事として何とも言えなくなっていたこと、大学によっては被災者に受験料を払い戻すお知らせを受験会場でしていたこと、その被災者に受験会場で「今お金あるから」と関西弁のイントネーションでナンパされて(その金そういうことに使う金じゃねえだろ!落ちろ!お前落ちろ!)と密かにブチギレていたこと、そんなこんなで2.5勝4.5敗(進学先を決めて入学手続き終えた直後に偏差値的にはもっと高い他の大学にも補欠で合格していたことを知った)の戦績を収め住む部屋も決めて上京まで1週間あるかないかくらいの時、数日前に乗った地下鉄で新興宗教がテロを起こしていたこと、その騒然としている中キラキラした夢だけを追って飛行機乗って東京に降り立ったこと、田舎はまだ雪が残っているのに東京には桜が咲いていたこと、それが私の1995年なのでmid90sへの思い入れはそれなりにあります。

でもこの映画刺さらなかったな。意外なほどに刺さらなかったし聞いたことある曲もハービー・ハンコック『Watermelon Man』くらい?

これ、どこにも行き場所のない、その街で生まれその街で死ぬ階層の話なんだよね。日本に置き換えると時代関係は多少前後しますがスケボーというよりバンドブームでバンドやって楽器屋の近くにたむろってるマイルドヤンキーたちの話。東京の大学を目指すというキャリアパスを与えられていない人たち。

うちの田舎でいうとGLAYパイセンやYUKIパイセンがこういう感じのカルチャーで生きていた人なのであの人らよくあんなどん詰まりから抜け出して天下取ったな凄えなって素直に感心しちゃう。なんかもうこの映画に流れるものは『海炭市叙景』とかその辺の佐藤泰志原作映画で描かれている空気感と共通してるものだから、私の原風景となる時代や場所を切り取られても全くそこに漂うものに自分はいなくて戸惑うというか愕然としてしまう。こんなにも人間社会は些細な分断で溢れているのかと。些細な分断がいくつか重なると隣り合っていたとしてもここまで全く交わらないんだなと。
ーcoyolyー

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