荒澤龍

mid90s ミッドナインティーズの荒澤龍のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

「閉塞した世界から抜け出すためにもがく青年の疾走感あふれる青春物語」

行き止まりの世界に生まれて、という別の映画を観て他の方のレビューからこの映画を知り鑑賞。

どちらも退廃的な世界でもがき運命に逆らおうとする若者のドキュメンタリーであるが、演出はこちらの方に軍配をあげたい。冒頭の暴力的なシーンの生々しさは、この映画の自己紹介としては抜群で、目を逸らしたくなる気持ちとそれでも惹き込まれる気持ちが同時に沸き起こった。

随所に演出の上手さが垣間見えた。特に冒頭の暴力シーン、スティーヴィーが性行為を初体験で興奮を噛み殺そうとするシーン、事故シーンは突出していると感じた。

楽曲はNine Inch Nailsのトレントレズナーで、その重たいサウンドが映画に非常にマッチしていた。


1990年代の質感がたまらない。ずっとセピアがかった印象を受け、まさに青春といった感じ。

自分たちの見える範囲の世界で頂点に立つ者に憧れる。今回は度胸や悪であることが評価される所謂ヤンキー文化であるが、これは学歴や金、育ちなどの形に変わるがどこでも発生する反応であり、そこから逃れて生きることはできない。頂点に立つ者と同じ言葉、同じ態度で同一視していく。その世界がどんなに狭く、一般的じゃないとしても、自分の視界に入るもの以上の想像はできないもので、それが若者なら尚更だ。
その中で必死に生きる姿を誰も笑えない。むしろ運命に抗おうとする姿に感動さえした。
荒澤龍

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