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女優と名探偵の一のレビュー・感想・評価

女優と名探偵(1950年製作の映画)
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これももちろん追いかけっこ映画。女スリ・西条鮎子を追ううちに探偵・日守新一は松竹の大船撮影所に入り込んでしまう。そこでは佐野周二、木暮実千代、田中絹代、若原雅夫、津島恵子、淡島千景、高橋貞二、高峰三枝子、佐分利信、佐田啓二、ついでに『自動車泥棒』なるウソ映画を演出する中村登監督などなど、オールスターが本人役で登場する。途中、唐突に『奥様に御用心』(実際に若原&絹代主演、中村登監督で作られた映画である)のタイトルが映し出され、映画内映画のワンシーンが始まったかと思いきや、そのまま女スリに鞄や紙入れを盗まれたスターたちのカットが連続。もはや難解なメタ構造が生まれている。西条が女スリと映画女優・西条鮎子自身を一人二役で演じているが、エンディングでは更に探偵・日守新一が役者・日守新一と撮影所の外で共演する。フランキー堺がセットとスタジオを飛びだして現代の品川を駆け抜けていくという『幕末太陽傳』における有名な幻のエンディングにも確かに連なるような虚構と現実への揺さぶり。中盤では「明るく楽しい松竹映画!」というセルフパロディな台詞も飛びしていたのだが、このノリが野村芳太郎(『モダン道中 その恋待ったなし』)や中平康(『牛乳屋フランキー』)に伝播したんだろうなー。
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