タイレンジャー

ナイチンゲールのタイレンジャーのレビュー・感想・評価

ナイチンゲール(2019年製作の映画)
4.0
ジェニファー・ケント監督の前作にて長編デビュー作にあたる『ババドック 暗闇の魔物』と本作を比較すると、彼女の作家性というものが明確に浮き彫りになります。両作品に共通するのは「母親にとって決して起きてほしくない事態が身に降りかかる悪夢」を描いているという点です。

両作ともに「母親であることの苦しみ」の一点をグリグリ~と突いてくる内容のため、これから母親になろうとしている人には決して観させてはいけない映画だと思います。

それから、主人公のクレアをレイプしまくるイギリス人将校がどんな脂ぎった醜いオッサンなのかと思いきや、実はこれがシュッとしたイケメンなのです。

ディズニーのプリンセス映画に出てきそうな「白馬の王子様」的なルックスなので、日本の女子にも人気が出そうな感じです。そんな白馬の王子様が先住民族を「動物」扱いし、女性を「性玩具」扱いするのですから、ギャップが凄いですね。黙っていればイケメン、喋らせたら鬼畜です。

なぜわざわざイケメン設定にしたのかなーと考えてみましたが、外面の良い対外的な「オーストラリア史」の象徴なのかもしれないなぁと思いました。

そもそもイギリス人がオーストラリア大陸を「開拓」した歴史は、ホロコーストも真っ青の人種差別・大量虐殺を抜きにしては語れませんからね。

史実が語られずに、観光的なイメージのみで語られるのが今の外面の良いオーストラリア=イケメン将校、という。で、見た目の良いイケメン将校も実は・・・と、ジェニファー・ケントがオーストラリアの暗黒史を内部告発するかような映画ですな。