歴史上の人物であるフローレンスナイチンゲールの伝記映画か何かと思っていたら全然違いました。
ゴロツキ軍人たちに愛する夫と赤ん坊を目の前で殺され強姦された流刑囚の女性が復讐を誓う、レイプリベンジ映画に近いです。
ただこの女性主人公もなかなかのクセ者で、アボリジニの人々を人間扱いせず、「私はアイルランド出身でイギリス人に差別されてきた！」と言って除ける。まるで自分は被害者なんだと言いたげで、そのくせ黒人は平気で差別する。
復讐に燃えているとはいえ嫌な女であることは間違いなんだけど、アボリジニの青年と行動を共にするうちにそんな彼女の心境が徐々に変化していく。
黒人奴隷や先住民迫害を描いたアメリカ映画は数あれど、オーストラリア映画でこの手のテーマを扱った作品は珍しく思います（自分が無知なだけかもしれませんが）
単なるエログロバイオレンスなレイプリベンジに終わらず、オーストラリアという土地の歴史や成り立ちにも迫っており好印象。
幼い我が子の喪失による悲しみを乳房の張りや痛みで表現するあたりは女性監督ならではの秀逸な描写だと思いました。
「ババドック」の監督というだけあって悪夢的ホラー演出もなかなかのもの。
ただ前半が良かっただけに中盤から終盤にかけての展開に荒が目立ってしまっているのが気になりました。
鬱蒼とした森林の中で仲間と離れ離れになって道に迷っていたら運良く馬車を見つけて運良く乗せてもらい、運良く仲間と再会とはちょっと出来過ぎでは？
終盤の街のシーンでも、黒人差別が激しく「離れたら殺されるぞ！」と念を押されているのにも関わらず平気で別行動するし、別行動したところで大して影響なかったり。
挙げ句の果てに誰にも発見されずに重要人物の宿泊する宿屋に忍び込む始末。ボディペイントに槍を構えた黒人が入り込んできたら普通は大騒ぎになるはずだが、どんだけ警備がザルなんだろうか。
主人公が歌を披露する場面なんかは、普通だったらすぐ摘み出されるんじゃないの？と妙に冷めた視点で見てしまった。
細かい事は気になるものの、なかなか見応えのある作品でした。
エンドロール後にちょっとした字幕が流れるので、最後まで席を立たずに見ていただきたいです。
