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7月22日のesewのレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
2.5
2020.8/10

テロ事件が最初の30分で終わって、「後2時間も後日談ある!」って期待が最高に高まったけど、2時間たっぷり与えられてその時間を巧く使えず掘り下げが不十分だったので残念だった。

ヨーロピアン(テロ犯のブレイビクは極右思想によって欧州域外からの移民と自分を分けるためにこう自称する)っていう概念?これが恐ろしかった。そして、歴史の中から十字軍遠征でイスラムを侵略したテンプル騎士団を拾い出して、その象徴とし、自分たちヨーロピアンは聖戦を行う正統なグループであるとする考え方も背筋が凍る。

極右の精神的指導者みたいな人が、恐怖と怒りが欧州にも北米にも高まっているからいずれ自分たちが勝つと言ってるところにこの事件や現代社会の問題の核心があると思う。

欧州や北米の没落した白人が抱えるこの恐怖を取り除くこと、彼らがこの怒りが見当違いなものだと自分で認識することが最終的な解決だと思うけど、この映画ではノルウェーはこの怒りや恐怖を抱える人間たちはただの孤立した超少数派の独りよがりな狂人に過ぎないと切って捨ててしまって真正面から組み合えなかったように見える。

テロ犯ブレイビクに対して、何度も「お前は孤独で仲間などいない」というセリフがテロ事件生存者のビリヤルや、被告弁護士のリッペスタッド、ノルウェー首相ストルテンベルクの口から発せられる脚本になってるけど、それこそがテロと極右思想の広がりに恐怖して無かったことにしたいという態度に見えてしまう。ビリヤルは直接の被害者だから強烈なダイレクトな拒否感情が現れるのは仕方ないけれど。

生存者の移民の女の子が言った「私たちの何が怖いのか?」という問いを、極右側も、政府や社会の側も真摯に受けて止めて考えるべきなんじゃないかと思う。

なぜ恐れるのか?自分が何を怖いと思っているのか、誰もが自分の弱さと醜さへの理解が足りない。

この映画では、ブレイビクとリッペスタッド、リッペスタッドと検察のやり取りが少な過ぎたと思う。いっぱい時間があったのに、ビリヤルの事件後の社会復帰と家庭問題に時間を割き過ぎた。それはビリヤルの人間物語として別の映画で語った方が説得力があったと思う。
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