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ROMA/ローマのgeminidoorsのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.3
話題になった当時から気にはしていたが遅ればせながら鑑賞。何故だろう、予告とか観て"真面目に紡ぎあげてそうな作品かナァ"と想うと、最近はつい敬遠してしまうワタシなのだが、本作では痛く反省した。こりゃエラく良かったぞなもし。

なんの前知識なく、題のRomaは所謂ジプシー系の"ロマ"だとワタシ勝手に思い込んでいた。
が、全然違っていた。地区の名称だったのだね。
観てから多くの方の感動のレビューを拝見し、逐一書かれている事に頷けたよ。

精度の高いモノクロ画像も、脚本の構成も、場面毎の構図も、かなり魅入れる要因だった。あと下手なBGMが流れなくて良い。
手術室のシーンのリアルさに驚いた。我が娘の出産時のあれこれを思い出してしまい、つい涙が出てしまった。

あとは終局クライマックスの浜辺だ。
泳げない我をも顧みずに雇い主の子供達を荒波から助けた主人公…その撮影が素晴らしく、唸らされた。
その後浜辺で皆で寄り添い合い、それはまるで…孤島での死闘の末、頂きに旗を立てた兵士の抱き合う塊の様な象徴的構図。
その各々の隙間から、夕陽がキラっと逆光で差し込む場面。溜め息が出た。思いっきりヤラれた。

最終場面、屋上の洗濯場への階段を登り消える主人公。壁に囲まれた中庭?から見上げた空高くに小さく、白いジェット機が音も無く横切ってゆく…
それは一見、清々しさもあるエンディングだ。
併し、作り手は過ぎた日々を描きながらも、たしかに描いていたー
其処に在る"格差"や、市井の民を横に"激しく変わりゆく政治"というか時代というか… 後はいつの世にも+場にも"隔たる男女の意識差"とかー
静かだけどハッキリ描いていた事を改めて想う。
その裏返しが、あの様なエンディングの演出と構図なのだと思える。

観終えて残る表層の清々しさや感慨の下、底の方には…
或る哀しさというか、謂わば"切ない傷痕の様な感覚"もしっかりと残るのをワタシ自身が客観する。
きっと自らとは表面では遠い様で、内側では遠くはない部分がたしかに在る作品なのかも知れない。

良質な映画だったし、こんな作品に又折を見て触れられたらナと切に思う。

静かに拍手した。
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