きゃんちょめ

ROMA/ローマのきゃんちょめのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
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この映画は、1971年6月10日に起きた「聖体祝日(コーパス・クリスティ)の虐殺」を描いている。犠牲者は最大で120人だという。舞台はイタリアのローマではなくメキシコシティの中心部にあるコロニア・ローマ地区。アルフォンソ・キュアロン監督自身の1971年頃の思い出を描く。主人公はキュアロン家のメイドのクレオで、モデルはリボリア・ロドリゲスというひと。この映画は監督自身の古い記憶の表現であるために、あえてモノクロなのだが、非常に映像が高精細である。キュアロン家の家族構成は①父アントニオ、②母ソフィア、③長男トーニョ、④次男パコ、⑤長女ソフィア、⑥三男で末っ子のぺぺ、⑦祖母テレサの7人で、そこに住み込みのふたりの女中として⑧クレオと⑨アデラがいる。クレオとアデラが使っているのは先住民ミュテシカ族の言語である。クレオの故郷はオアハカ州なのだ。父親アントニオの職業はおそらくキュアロンの父がそうであるから物理学者なのだろう。この映画で描かれている時代のメキシコの政権与党はPRI(制度的革命党)と言ってエチュベリア大統領が有名。一党独裁で白人の独占支配を続けてきた政党であった。女中アデラのボーイフレンドはラモンという。主人公クレオのボーイフレンドはフェルミンである。フェルミンはPRI政府公認の右翼団体ロス・アルコネスのメンバーなのである。父アントニオに愛人がいることに気づいているソフィアは機嫌が悪く、クレオに八つ当たりをすることもある。しかし、クレオが妊娠を告げるやいなやフェルミンに逃げられたと知ると、ソフィアは一緒に悲しむのである。母の親戚のドン・ホセは大金持ちで、アシエンダ(大農園)を保有している。この映画は宇宙飛行士のコスプレの描写ひとつとっても、それをバケツでやる階級と宇宙服を買ってもらえる階級とでしっかりと描き分けている。先住民に対して白人がやってきた抑圧、女性に対して男性がやってきた抑圧を鋭く描いている。そして感情を滅多に表に出さないクレオが何を感じていたのか、繊細に描いている。
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