喜連川風連

ROMA/ローマの喜連川風連のレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.0
メキシコの中流家庭に使えるある女性家政婦とそこにある数々の愛と哀しみを描く。監督自身の体験もベースになっており、1970年代の混乱するメキシコ情勢を背景に描かれます。

カメラワークは体全体を映すフルショットと横移動の長回しがほとんどで、「自分があたかもそこにいる感じ」を感じました。
▶︎キュアロン監督がインタビューで、魂としてタイムスリップしたことを表現したため役者との間に触れない距離感があるとのこと。

序盤顔へのクロースアップがほとんどない、画面に変化のない長回しがほとんどでした。加えて、日常を映すことを重視したためか、誰が主人公なのかわかりづらく物語に入り込むまで、付いていくのが大変でしたが、入り込んでしまえば、そこに没入しました。

BGMは無く、映画内で使われている音楽や日常の音、鳥のさえずりが劇場内に響き渡ります。

バーでの会話シーンでスクリーン後方から他の客の会話が聞こえ、前方からクレアの声が聞こえたシーンや
エンディングシーンで下方から子どもがボールを投げてガラスを割る音、飛行機の音、鳥のさえずりが響く劇場は凄く良い空間でした。

人間の眼球で見ている風景や生活に近づいていくと、カットバックは野暮なのかもしれません。ですが、リアルな映像が一番面白いものでないことは、トゥルーマン・ショーが示している通りで、この流れがこれからどう変わっていくか楽しみです。

是枝監督しかり、近年受賞作を中心に流行りを見せる長回しですが、個人的には、編集と細かいカットバックを繰り返す岡本喜八さんのようなハイテンポの映画が好きなので、変化の少ない長回し映画は趣向には合いませんでしたが、豊かな時間を過ごすことができました。
喜連川風連

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