アサイヤスがこんなに軽い話を撮ったのがまず驚き。常に全力投球だったアサイヤスもいつのまにか緩急を織り交ぜながら映画を撮るようになった?
映像的にもテーマ的にもなんらアサイヤスとして目新しいものはない。それどころかベルイマンとヴィスコンティに対する印象的な言及はカイエ・デュ・シネマ出身であるアサイヤス自身の出自=過去に対する言及でもあるのだが、映画として現在形というか前を向いているとしか言いようがないのだ。映画館で『白いリボン』観ながらオーラルセックス(!)みたいな小ネタも面白い。
律儀にイマジナリーラインを破りながら(ちなみにこの破り方は『8月のはじまり、9月の終わり』でも見られたもので"教科書的なルール違反"だ)、いかにもフランス映画的な会話を続けていたはずなのに、ふと気が付いたらルビッチの域に到達してしまったとは褒めすぎだろうか。2019年、最も印象的な新作の1つ。