無知A

記憶にございません!の無知Aのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
3.6
本作も三谷幸喜お馴染みの温かいコメディ作品だった。『ザ・マジックアワー』でもそうだったが、三谷幸喜監督と佐藤浩市の相性は抜群で魅力的である。勿論、中井貴一や草刈正雄、石田ゆり子、小池栄子を始めとした豪華な俳優陣のそれぞれに魅力があり、作品を盛り上げていた。素晴らしい監督に素晴らしい俳優陣、高評価も頷ける。

さて、ここからは具体的な内容について触れていく。本作は、横暴で独善的な主人公が、記憶喪失を通じて、人格を再形成し、人生をやり直すといった物語だが、シンプルで、そう珍しい話でもない。しかし、美女にテンポが良く見やすいという点に加え、コメディとして、作品が持つ雰囲気の良さは他のコメディ作品に優っていた。これといって、急展開がある訳でも、感慨深い要素について深く掘り下げられている訳でもないが、非常に安定性のある作品だった。土台、基礎の部分がしっかりとしているので、安心安全の内容だったと言える。悪に位置する主人公が、記憶喪失を通じて、人間性を反転させ、怒涛のサクセスストーリーそのものの魅力よりも、個々の魅力が活きていた。さながら、高級な素材を使った寄せ鍋といった感じである。

総じて、気軽に見られる良い作品だった。もう一つ何かパンチの効いた要素が欲しいところだが、敢えてつけ足さず、安定感を持たせている事に、三谷幸喜監督の色を感じる。


(内訳)
面白さ 3.8
学び 3.2
構造 3.6
無知A

無知A