偽名祐司

記憶にございません!の偽名祐司のレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
3.8
三谷監督の記憶にない程の傑作って言うには少し丸すぎる。
最後のキャスト紹介映像がいちいち酷い(褒め言葉)政治ちょっとだけ風刺コメディ。

話はアプリ参照で
史上最悪の支持率2%を叩きした黒田内閣総理大臣は石を頭にぶつけられ昏睡状態から目が覚め、おかしな言動を見せ始めた。
どうやら学生時代以降の記憶がない、部分的な記憶喪失になってしまったようだ。結婚した妻や息子、政府関係者の事も記憶にない、最悪の事態である。事実を知っているのは側近のみ。
はたしてこの状態をどうやって乗り切っていくのだろうか。

病院で意識を戻し、自分のニュース映像を観ながら街を放浪するオープニングであっという間に状況説明をするのは流石である。
三谷監督得意技の人間関係勘違いネタが炸裂する前半は安定の面白さ。
おどおどする中井貴一が右も左もわからない総理を良い感じに演じている。
吉田羊が凄いオーラを放つホテルネタは大人しか笑えませんがずるい。
ディーンフジオカ、草刈民雄、小池栄子、と脇を固めるキャラクターも非常に個性的。
政治ゴロの佐藤はちょっと良い役すぎる気がしますがそこはおばさん女装で相殺って事で。

個人的MVPはアメリカ大統領傍付の通訳。非常に良いネタを持ち、会食シーンの細かい演技とか実に面白かった。
何となく風刺してるような気がする「たぶん気のせい(公式設定)」な、英語喋れない外相、フィリピンバブ入り浸る、クールビズで7分袖半ズボン閣僚、その他多くのなんか色々気のせいなキャラクター達。ネタには困らないのが笑って良いのかこの国の人間として困るのか。

閣僚当てクイズの落ちは素直に笑いました。何故父を入れたし。そして何故官房長官ガッツポーズするのか。
幾人か、俳優の力で強引になんとかしてるネタもありましたが。それは俳優の豪華さって事で。

後半、記憶を無くした事を武器に改めて政治の世界に飛び込んでいく展開はまあ王道ですが面白い。

面白いのですが政治ネタであるので正直上手く行きすぎなのがちょっとなあ、という気分にもなる。
実は対して政治的なことは出来ていないし、問題を何か解決したわけでもないというのが微妙。
聞く人全員が「そりゃ無駄だよね!」って思う事間違いなしプロジェクト解体して官房長官を吹き飛ばすだけでも十分かもしれませんが。っていうか官房長官それで辞めるの?!

あっさりと息子が「政治家目指すよ!」って心変わりするのも、不倫関係からの奥さんとの関係あっさり回復するのもサックリ行き過ぎかなあと。

あまりにも色々綺麗に丸く収まるのが他が舞台なら良いけど政界舞台となると少し違和感を覚えます。

とは言え、
「記憶を無くす、しがらみを全て捨てる事は普通は出来ない。無くした自分だから頑張れる」
「国を動かす総理大臣が皆に憧れない生活などしてはいけない」等々、色々良い台詞もあったりして。

最後少し展開的にもサプライズをしこみ、綺麗に終わるこの作品。
万人が楽しめるコメディとして普通にお勧めできると思います。
偽名祐司

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