けーすけ

ラストレターのけーすけのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
3.8
美咲が死んだ。妹の裕里(松たか子)は、美咲の娘・鮎美(広瀬すず)から美咲宛に届いていた高校の同窓会の案内を受け取り、美咲の死を伝える為に同窓会へ行く事にした。ところが同窓会で裕里は美咲と間違われてしまい、その事を言い出せない雰囲気になってしまった。そしてかつての先輩であり裕里の初恋の相手、乙坂鏡史郎(福山雅治)とも再会し、連絡先を交換したのであったが・・・








てっきり松たか子と福山雅治のラブストーリーかと思ってたらちょっと違いました…。


2000年代以降、Eメールや携帯電話・スマホでのメッセージツールが主流になっていますが、手紙・文通から始まり、初恋を起点として描かれる過去の話がただのラブストーリーではなく、残された家族の心の傷を癒す物語ともなっておりました。

「このご時世に手書きの手紙?」となりそうな所ですが、(多少強引な部分はあるものの)一応自然に手紙でのやりとりのアナログ感と良さを切り取って描写していたと思います。





現代パートで美咲の一人娘・鮎美を広瀬すずが、そして従姉妹である裕里の娘・颯香を森七菜が演じるという、とんでもない美少女眼福の嵐。
本作の撮影は2018年の夏頃だったようで、森七菜も今(2021年)に比べて少し幼い雰囲気が見てわかるかと思います。


そして過去パートにおいて、二人は美咲と裕里が高校生だった頃を演じるという変則的な2役だったので「ごっちゃにならんかな?」と少し心配したのですが、丁寧な物語の運び方できちんとそれぞれの時代の役柄が切り分けられておりました。

広瀬すずの透明感、そして佇まいと演技は言葉に言い表せない凄さでした。表情と目の動きで言いたい事や感情が伝わってくるってのにビビりました。

森七菜は本作が長編映画デビューだったのですかね?初々しい感じはあるけど、しっかりとした存在感で従姉妹&妹を熱演しておりました。(事務所移籍のゴタゴタ、この先何も影響無いといいのですが…)



本作でキーマンとなる乙坂鏡史郎。彼は一応小説家。過去に出した本がたまたま賞を獲ったものの、その後は何を書けばいいのか分からずくすぶり続けている状況。その原因は初恋の相手でもあった美咲をずっと想い続けていたから。
そんなジメジメした雰囲気の男性を福山雅治が演じるという。あまりイメージできないかもですが、これが流石というかちゃんと“うだつの上がらない”ちょっと頼りない雰囲気のキャラを演じていて、新たな福山雅治が見られた気がします(とはいえ放たれるイケメン感は後半になるにつれ隠しきれない)。


そんな鏡史郎の過去パートで高校生時代を演じたのは福山雅治本人…!ではなく、神木隆之介。最初の登場時に「イモっぽい人やなあ。でも見た事あるな、、誰だっけ?」と一瞬なったくらいに分からなかった。本人も20代半ばで高校生役やるとは思ってなかったかもですが(とはいえ映画『3月のライオン』でも高校生役やってるけど)。30歳なっても高校生役やってそうなので、その辺にも期待しようっと。


裕里を演じた松たか子。姉の美咲と間違えられて、鏡史郎からも「君にまだ恋をしているって言ったら信じますか」とメッセージをもらうという、一歩間違えたら泥沼になりそうなところをサッパリとした対応で切り抜けるという好演を発揮。
ところが一転、鏡史郎に一方的に手紙を送り続けるという若干ヤバい行為も。しかし、ふんわりとした雰囲気にしてシリアスになりすぎない感じさせ方は本作のテイストにズバっとハマっていたと思います。


裕里の旦那である漫画家・宗二郎(庵野秀明)がなんともいえないキモさを発揮していたのも印象に残った部分。鏡史郎からのメッセージを偶然見かけて浮気を疑い、スマホを風呂に放り投げるわ、「次の漫画の構想に」と大型犬のボルゾイ2匹(しかも成犬)を買ってきて「世話、よろしく!」と裕里に押し付けるモラハラっぷりを発揮。何気に本作で一番謎な人物だったかも。一体どんな結婚&夫婦生活を送ってきたのかがひたすらに気になるのである意味ご注目!


トヨエツこと豊川悦司。登場時間もほんの少しなのですが、何とも言えないドロっとした爪痕をしっかりと残していったのが「トヨエツだなぁ」と感じたところ。ただいつもほどの謎の色気を発揮する役じゃなかったのが個人的に残念でしたかね。





あまり内容に深く触れずに登場人物・役者の感想メインになってしまったのは、それだけ俳優陣が良かったからってところです。


舞台が仙台っていうのも以前に住んでいた者としては好ポイント(正確にはメイン舞台となる白石は宮城県の白石市ですが)。

因みに過去パートで神木隆之介演じる鏡史郎が高校に転校してきた日付が黒板に6月8日(月)と書かれてあり、合致するのは1992年でした。なので現代となる舞台は2017年かと思われます。本編にはほぼ関わってこないですが予備知識としてどうぞ。


雑然とした感想になっちゃいましたが、恋愛のキュンキュンとはまた違った不思議な味わいのある面白い映画でした。広瀬すず×森七菜がめちゃめちゃにいいので、2人がちょっとでも好きな人はぜひ!



2021/01/28(木) TSUTAYA DISCAS定額レンタルにて鑑賞。

[2021-011]
けーすけ

けーすけ