ひろぽん

ラストレターのひろぽんのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
3.8
姉の葬儀に参列した岸辺野裕里は、亡き姉の未咲のもとに同窓会の案内が届いていたことを知る。姉の死を知らせる為に同窓会に向かった彼女は、未咲本人と勘違いされ、そこで初恋の相手と再会を果たす。人違いであることを言い出せず、小説家となった彼と手紙のやり取りを始める。ひょんなことから始まった手紙、未咲の死の真相、過去と現在、それぞれの交差する思いを巡る物語。


未咲の死を巡って、学生時代の記憶や淡い思い出が甦り、運命が動き出していく。

裕里の初恋の思い出や、乙坂の未咲に対する想い、未咲の娘である鮎美の気持ちがそれぞれ交差して、故人・未咲を中心に渦巻く。

メールやLINE、SNSが普及し、気軽にやり取りができる時代だからこそ、手紙といったツールのやり取りは温かみがあり心に沁みる。

言葉の選び方、文字の大きさや形、封筒や便箋の色など、細部にまでこだわって形あるものとして手間をかけて相手に送るという行為に、古き良き時代の味わい深さを感じることができる。現代では手紙を書くことが少なくなってしまったけど、たまに書くからこそ特別感があって良いのかもしれない。

この作品の賛否分かれる点としては、キーマンとなる「乙坂」の想いが受け入れられるか否かだと思う。

学生時代から数十年経ち、中年のおじさんになっても10代の頃の恋が忘れられないと言う売れない小説家の乙坂。過去に未咲との思い出を小説に書き、賞を貰うも過去にとらわれたまま先に進めずにくすぶっている。良く言えば純粋で愛の深い一途な男、悪く言えば学生時代の恋愛を引きずっているイタイおじさん。人によってはこれが気持ち悪く感じるのかもしれない。

一人二役を演じる広瀬すずと森七菜の演技がとても良かった。それぞれ岸辺野姉妹の青年期と彼女たちの娘役を演じるのだが、絶妙に雰囲気が違く、役を使い分けているところが流石女優さんだなと思った。

広瀬すずが「母に会ってやって下さい」と言う終盤のシーンや、森七菜が涙目ながらラブレターを渡すシーンが心を奪われるほど素晴らしかった。

広瀬すずと森七菜が楽しそうに絡んでるところや、2人で並んで写真を撮るシーンは本当に美しく癒される。森七菜の素朴な学生の雰囲気がとても好き。

神木隆之介に関しては、何歳になっても学生服が似合う不思議な神木マジック。

ラストレターは鮎美に向けた未咲の学生時代の答辞となっているが、素敵な言葉だった。

中学生の時に貰ったラブレターとか、高校生の時にLINEとは別にやり取りしてた手紙とか色々思い出した°ʚ✉ɞ°
誰かに手紙を書きたくなる作品。
映像が本当に綺麗。
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