湾岸に住むランナー

ラストレターの湾岸に住むランナーのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.5
 大谷翔平は言った。『憧れるのをやめましょう…』そして、私は言いたい。『重箱の隅をつつくのはやめましょう…』この愛しい映画のために、そう言いたい。
 だって、突っ込みどころ満載だもの。二世代かけて、三角関係の恋模様を、美しく完結させるなんて、普通あり得ない。でも、それでいい映画なのだと思う。
 不勉強で、岩井俊二監督のことは知らなかった。でも、この映画を見て1分で、その世界が好きになった。一コマ一コマのアングルが素敵。現実には言えないような気障な台詞が素敵。こうだったらなあと思うような世界が、再現されているのが素敵。この沼は、けっこう深いかも。
 
 『君にまだ、ずっと恋してるって言ったら信じますか。』なんて台詞は、現実にはなかなか言えない。人は何かを言って後悔することは無限にあるだろうが、言わないでしまった言葉や思いの方が、もっと多いと想像する。言えなかった言葉、言わなくて良かったのかもしれない言葉、それでも言うべきだったのかもしれない言葉……誰でもそんな言葉を心の裡に持っている。この映画は、そんな言霊だちを材料に出来ているのではないか。一生言うはずがなかった言葉を、別の形で表現できる映画監督が、とても羨ましい。