映画好きの柴犬

ラストレターの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.1
 手紙をモチーフにし、現在と回想が入り混じる構成など、「Love Letter」と似ているところは多い。一方、年齢設定が40代になったことで、全体が淡くノスタルジックだった「Love Letter」に比べて、人生の闇が描き出され、画作りも手持ちカメラの不安定さとかの特徴的なカメラワークは抑え気味でかっちりした印象。

 「Love Letter」が「青春の残り火」なら、本作は「再生」かな。ストーリーの中心となる妹・裕里を狂言回しにして、鏡史郎そして未咲の娘・鮎美の止まった時間が動き出すことを描いているように思う。本作も「Love Letter」同様、劇中で描かれない部分に思いを巡らせて余韻に浸る極上の時間を与えてくれる。

 役者陣は、これ以上ない布陣。その中でも、裕里を演じた松たか子と森七菜の、まるで演技をしていないように見える自然体の演技は素晴らしかった。撮影時16歳だった森七菜のいい意味での子供っぽい無邪気さと瑞々しさ。そして、その無邪気さを失わずに歳を重ねたような松たか子の演技で、裕里がちゃんと同一人物に見えた。