喜連川風連

ラストレターの喜連川風連のレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
3.5
朝、夢で初恋の人に会った。
もやもやとした気持ちを抱えながらその日の仕事を終えると、足は自然と映画館へと向かい
図らずも恋愛映画を観に来てしまった。

レディースデーとあって、劇場内は女性ばかりである。

映画が始まると、もう広瀬すずがその人にしか見えない。

「初恋」「青春」「高校生」古来より多くの大家たちが挑んできた普遍のテーマであるが、いずれもなんと甘美な日本語の響きだろう。
ただ、語り尽くされてきた感はあり、少々食傷気味ではある。

そういったものがふんだんに閉じこめられていた映画でもあった。

いずれにせよ、岩井俊二さんに二人の女の子の会話を描かせたら一級品だ。

広瀬すずと森七菜の会話を岩井俊二さんが書かれてたと考えると気持ち悪凄い(褒め)

序盤はそれぞれの迷いを表すようにブレの多い手持ちカムでの撮影が主となり、徐々にピンボケを多用したカットへと切り替わる。

過去の呪縛に囚われるように生活してきた福山雅治はすがるように手紙のやり取りをするが、既に彼女はこの世にない。

なぜ男はこう、初恋の呪縛に囚われてしまうのだろうか。
1番好きだった人のことをいつまでもくよくよ忘れられないのだろうか。

もやもやしたまま、とうとう映画は終わってしまった。
アクセルは踏み切らないまま。
感情はオブビートのまま終わってしまった。
〜してしまったという表現が1番合う。
煮え切らないけど、これ以上煮ようがない。

いつまでもどこまでも耽美派。
誰が観ても心から美しい画面ではなく、岩井さんが美しいと想うものを讃えている映画。

今日帰って、その人からの手紙を読み返そうと思う。

追記.過去作と比べての物足りなさは花とアリス以前の撮影監督が逝去されてたからなんですね。。。
ドローンでの撮影や、スタビライザーでのブレのないカメラワーク、そのどれもが手段先行の技術で思想がない。

篠田昇さんが作った夢。
岩井ブランドの確立。
踊る大衆。

もうあの頃の美しさはない。

儚い。。
喜連川風連

喜連川風連