真田ピロシキ

ゾンビランド:ダブルタップの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.3
最近『ラストオブアス2』をやっているのですが、話は重すぎるし戦闘はノーマル難易度でもとてもシビアであらゆるゾンビものの中で一番怖いんじゃないかと思うレベルで神経をすり減らしている。そんなSONYのゲームで疲弊したゾンビ感性を癒やしてくれるお気楽ゾンビ映画は同じくSONYの配給。なんていう優しさだろう。マッチポンプとも言う。

前作で成立したオタク青年コロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)とウィチタ(エマ・ストーン)の恋愛関係や、マッチョなオジさんタラハシー(ウディ・ハレルソン)からウィチタの妹リトルロック(アビゲイル・ブレスリン)の自立など擬似家族の行く末が物語にあるがそこまで深刻に捉えるものではなく、ゾンビキルオブザイヤーや尊敬するプレスリーを訪ねるタラハシーなどのオマケ程度で良し。ゾンビはホーマー(シンプソンズ)にホーキング(博士)、ニンジャに加えてT800(ターミネーター)と様々な由来の多様なタイプがゾンビゲームさながらに出てくるが、実質的にスポットライトが当たるのはほぼ異様にしぶといだけのT800。頭の良いホーキングやステルス性の高いニンジャなどは設定倒れ。そういうユルさもこのノリなら流してしまえる。ゾンビを殺すのが派手で景気が良ければいいだろう?と。

結婚を望むようになったコロンバスを重荷に感じたウィチタはリトルロックと出て行くが、その間にモールで知り合ったのが率直に言って非常に頭のお軽いブロンド女マディソン(ゾーイ・ドゥイッチ)。頭は軽くても憎めないキャラクターでこれが真面目なゾンビ映画なら死んで悲しませる役どころで実際足を噛まれたように見えたマディソンは変調をきたしコロンバスに始末を託されるも、この映画のノリを思うとやっぱりそうかいと。マディソンの吹き替えは何と安達祐実で専業声優の中で全く浮かない好演技。

家出中のリトルロックが知り合ったヒッピーのバークレー(アヴァン・ジョーギア)はボブ・ディランを自分のオリジナル曲と言い張ったり、2人がたどり着いたコミューンもゾンビアポカリプスの中で危機意識のない平和主義者の集まりと間が抜けている。本作中の非白人はグレイスランドで出会うネバダ(ロザリオ・ドーソン)を除けばほとんどこのコミューンの人間で、最終的に暴力で解決したうえに銃の効果を印象付け、ベッタベタに男女のキスシーンで締めるのには昨今のポリティカルコレクトネスを意識しようという気持ちなど全く感じられない。しかしこれで良いのでしょう。監督が『ヴェノム』や『アンチャーテッド』のルーベン・フライシャーなのだから。物語に深い比喩を持たせようとしないのがむしろ良いところ。何の含蓄もない映画が必要になる時だって時にはある。ビル・マーレイの悪ノリにバッカでーと笑い飛ばしてしまえばいい。とは言え、コミューンの演出はトランプ的共和党臭さを感じてしまいやや気になったのだが。