てっぺい

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のてっぺいのレビュー・感想・評価

3.5
【何気に眼福映画】
「若草物語」の映画化。それぞれキャラが違う四姉妹の物語が、小説を書く次女の目線で一つの小説になり映画になっていく芸術的な脚本。衣装や景色が何気に美しすぎる眼福映画。
◆概要
第92回アカデミー賞作品賞ほか計6部門ノミネート、同衣装デザイン賞受賞作品。2020年6月12日公開。
原作:ルイザ・メイ・オルコットによる自叙伝的小説「若草物語」
監督・脚本:「レディ・バード」グレタ・ガーウィグ
出演:「レディ・バード」シアーシャ・ローナン、「君の名前で僕を呼んで」ティモシー・シャラメ、「美女と野獣」エマ・ワトソン、「ミッドサマー」フローレンス・ピュー、「プラダを着た悪魔」メリル・ストリープ、「マリッジ・ストーリー」ローラ・ダーン
◆ストーリー
しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続け、幼なじみからのプロポーズにも応じず、信じる道を突き進むが……。
◆感想
少女のほっこり成長物語。男でも伝わってくる、夢に向かう事と恋や結婚とのジレンマ。繊細に紡がれる心の機微が、時間軸を巧みに操る構成で芸術的に仕上げられる。美しい衣装や景色もふんだんで、何気に眼福な映画。

◆以下ネタバレ

◆成長物語
冒頭、出版社のドア前で緊張するジョー。喧嘩しながらも姉妹愛を育み、家族との死別も経験。夢に向かいプロポーズまで拒否、心揺らぐも時すでに遅し。でも最後には姉妹達の後押しで幸せをつかみ、夢も叶う。始めは何者でもなかったジョーが、誇らしげに自分の本を抱きしめるラストに至るまで、“女性が成功する事が難しい”時代で、1人の女性として成長していく姿がとても微笑ましかった。
◆眼福
昔見た名作劇場の通り、なんだかいつでもドレッシーな登場人物達。姉妹で殴り合う(笑)シーンでもフワフワな衣装だとなんだか美しく見えてしまう。個人的にはパーティーで友人の衣装を借りたピンクドレスのエマ・ワトソンの美しさにハートを撃ち抜かれました笑。さらにはジョーがプロポーズされる丘の俯瞰の画の美しいこと。前述のアカデミー衣装デザイン賞を獲るだけあって、視覚的に美しい要素をふんだんに取り入れた眼福映画でした。
◆プロット
成長した時代と過去とが幾度も切り替わるプロット。後述する、色分けで視覚的に識別させつつ、ポイントポイントで現在と過去を重ねる表現が素晴らしい。ジョーが目覚めるとベスが生きていた過去と、亡くなってしまった現在を重ねたシーンはまさに芸術的。さらに、ジョーの経験がそのまま小説になり、そのまま本作の展開になっていく不思議な脚本も素晴らしい。編集者にハッピーエンドを求められ、一度は見送ったベアを追っていく、本の展開がそのまま映画の展開になっていく不思議さはこの映画にしか出来ない構成だったと思う。
◆色分け
現在が青々した朝のような色で、過去はセピアがかった夕刻のような色。まるで、若草のような青々とした現在と、紅葉のように色づいた過去の色分けがまさに“若草”をイメージさせるようで、時代を識別する色分けに加えて、そんな本作になぞらえた映像表現が施されていたと捉えても面白い。加えて、その色分けは本の内容か現実のものかの色分けでもあるわけで、ラスト、学校の設立のシーンがセピア色がかっていたのは、本の内容としてジョーが想像したものであり、現実のものではないという捉え方もできると思う。

公開延期前から告知をだいぶ見て期待していた本作。エンドロールがロールでなく、昔の映画のような、小説のクレジットのような表現になっていたのも個人的にはツボ。「レディ・バード」コンビらしい女性の心理を繊細かつ大胆に描く良作でした。映画館が一つ席を開けて座る、ベストな状態で見れる今、溜まっていた延期作に今後も期待しかない!
◆トリビア
○ 本作には、ジョーが理不尽な要求を突き付けてきた編集者に反論するシーンがあるが、このシーンは原作小説には存在しない。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語)
○ 衣装デザインを担当したジャクリーン・デュランは、今作が映画『アンナ・カレーニナ』(2012年)以来、2度目のアカデミー衣装デザイン賞受賞。四姉妹それぞれに異なるカラーパレットを設定している。(https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_Wotopi_101488/pid_2.html)

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