安藤エヌ

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語の安藤エヌのレビュー・感想・評価

5.0
小説を読んでいると、物語の風景が頭の中に呼び起こさせられる瞬間があって、過去の幸福な日々を描いた場面では、黄金色のなつかしい風景となって想像される。

そしてわけもわからず、胸がこみ上げてきて泣きたくなってしまう。この映画はそんなシーンの連続だった。過去と今が行き来する構成で、過去のシーンは夕暮れの光が差し込んでいるかのような色合いで統一されている。あたたかなまどろみの中で話す四姉妹と、彼女たちのそばで自由奔放に過ごすローリー。いつかはこんなひとときが終わってしまうことを予期することなく、ただ「その瞬間」だけを懸命に、優しく生きる女性たち。彼女たちの姿を見ていると外見だけでなく、内面からの美しさが透けて見えるようだった。

女性は生きる上でさまざまな苦労をする。生きることは人との接点なしにできない。結婚や人生の価値観も時代に沿って通説的なものが移ろう。姉妹たちの生きた時代は、女性が大きな役割を持たざる時代だった。それでもジョーは、姉は、自分自身の自由を尊重し、最後まで自尊心を貫いて生きる。そのことが、どんなに美しく、たくましいか。
日々を生きる上で学びたい姿勢がそこにあった。ジョーのように強く、優しい女性になりたいと願った。幸せを自分の手で掴み、最後には「私達の物語」を大切そうに抱え、微笑んだ彼女の「生」に満開の拍手を贈りたい。

レディースデーに観るにふさわしい、学ぶべきものが多く美しい映画だった。
安藤エヌ

安藤エヌ