ニニ

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のニニのレビュー・感想・評価

4.5
私と若草物語の出会いは世界名作劇場のアニメ『愛の若草物語』。
小学校に上がってからは小説版を買い与えられて繰り返し読んだ。
だからかな、ただ映画を観てるという以上に懐かしい友達に会ったような気持ちでいっぱいになりました。
想像力を目一杯に働かせながら読み耽った四姉妹の少女時代のエピソードはどれもまるで私自身の思い出の如く胸に去来し。
こんな気持ちになるなんて自分でも思ってなかった。
何かにつけて涙がボロボロ出るのです。

登場人物全員のキャスティングと人物造形が神懸っていて、監督あなたは私ですか?と訊きたくなった。
メリル・ストリープは別としてもキャスト全員本作が最高の当たり役じゃないかと思うほど。
苦手だったエマ・ワトソン、好きになったよ。
まさかのまさかだけど製作陣、私と同じ世界名作劇場版を観たことあるのでは……??
一応Wikipediaによると英語翻訳版が存在しているらしい。
メグは緑、エイミーは水色、ベスはピンク、ジョーは赤という4人それぞれのイメージカラーも名作劇場版と共通していたのだけどこれの初出はどこなんだろう?

この映画の情報を最初に知った時、過去に何度も映像化されている手垢のつききった古典で今から新しいものなんて生み出せるのかな?と実は少し懐疑的だった。
でもFilmarksでの評価が高いのが気になって劇場へ。

純粋な文芸作品として小説の展開通りに映像化するのではなく、4作目まである原作のうち2作目を主軸に回想として最もポピュラーな1作目にある少女時代の物語を挿入するアイデアに唸った。
終わってしまった少女時代であることを踏まえて見るから、尚のことあの日々が愛おしくて。
成人してからのそれぞれの選択、幸せの形というのは現代にも通ずるテーマではあるけれど、大袈裟なエンパワーメントではなく姉妹それぞれの生き方を愛を持って描ききることで4人と私達のどの生き方も肯定してくれる。
原作者の分身にあたるジョーは原作の中では結婚し母にもなるけれど実際のルイザメイオルコットは生涯独身だったはずで、その点この映画内ではジョーの結婚を明確には描かずあくまでも「小説内で、出版社に求められて執筆した一場面」という位置付けにしたことでオルコットも含めた結婚しない人生も肯定してるんだなぁ。

本国の基準として、若草物語の原典とそれが著者自身の自伝的小説であること程度は最低限の教養として知っている前提で作られているように思う。
日本では読書好きな小学生でもなければ読まずに大人になる人も少なくないのかも知れないけれど、この映画を観て若草物語を読んだ気になるのはダメだと思う。
主だったエピソードは押さえてるけど、時系列は前後してるし、かいつまんであらすじだけ読んだようなもの。
この映画は映画として完璧で、若草物語なんだけど若草物語じゃないというか、新しい若草物語を見事に見せてくれた。

スクリーンで観られて本当に良かった。
できれば公開中にもう1回観たい。
悩んで買わなかったパンフレット、やっぱり買えば良かったな。
ニニ

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