すずす

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

49年版『若草物語』はNHK等で何度か観ておりますが、19世紀のガールズトーク的な舞台設定とキリスト教的犠牲心が押しつけがましく感じられ、置いてけぼりを喰らった印象でしたが、今回のバージョンは結構楽しく観られました。因みに、ハリウッドのスタジオでは五度目の映画化(①1918年のサイレント②キャサリン・ヘップバーン③エリザベス・テイラー④ウィノナ・ライダー⑤本作)になります。

ニューヨークの出版社に短編を売り込んでいるジョーの下に、報せが飛び込む。姉妹べスの病状が悪化したため、マサチューセッツの田舎へ帰郷。7年前、四人姉妹での幸福だった日々を振り返る。父が従軍牧師として南北戦争に行った為、マーチ家は女子だけの館になっていた。長女メグ、次女ジョー、三女のべス、四女のエイミー。まるで、ひと時の花園、女子高での日々の様に愉しかったが、大人になるに連れ、四人は自分なりの人生を歩みだしていく。隣家の息子ローリーとの恋、父の帰還、三女の猩紅熱など、裕福ではないが愉しかったマーチ家の日々。
帰郷した次女のジョーは、一度袖にした隣人ローリーとの恋をやり直そうと決意するが…

今回の映画化の特長は、先ず、物書きになったジョーから時制を遡って物語を複雑にし、古風な話をモダンに見せていること。そして、特にエンディング。「若草物語」初版の製本が完成するのを見届けるジョーの眼差しは、パートナー探しも重要だが、女性にとっては仕事の達成感の方が大事なのだ、という事を示唆し、爽快な幕切れとなっている。

大人になったジョーの語る物語は、まるで懐かしのアルバムを眺める女子高生の視点のように、姉妹の歴史を客観的に振り返っており、現代人の我々も、すんなり19世紀の乙女たちの世界に入り込みやすい作劇となっている。そして、それがドラマ全般を豊かにしているように思えた。

その他、19世紀の再現が良く出来ていて、ニューヨークの街並み、駅舎など、豪華セットに、華やかな社交界の場面など、流石ハリウッドの大作。

チェーホフの『三人姉妹』から受け継がれた主題の変奏は、この後、更に、昭和の極東で『細雪』となり、漫画『海街ダイアリー』にまで継承されている。
普遍的なガールズ・ワールドが、時代につれ微妙に移ろう姿、女性なら是非見ておくべきだと思う。
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