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ディリリとパリの時間旅行のgintaruのレビュー・感想・評価

ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)
4.1
1890年頃のパリ、ベル・エポックの時代がニューカレドニアから来た現地人とフランス人のハーフの少女の活躍を通して美しく描かれている。
パリの街並みは当時も今もそう変わらないということで、監督自らが撮影した街並みの写真を元に背景として使っているそうだ。だからとてもリアルな背景の中をイラスト的、平面的な人物が動くという独特な世界が表現されていて面白い。色彩もとても美しい。映像も引きで捉えたものが多く、今の日本のアニメとかハリウッドのSF映画に多く見られるような激しいカメラワークはほぼない。構図も斜め上とか下とからといった感じのものは少なく、真正面から安定して捉えるものが多い。それは一種紙芝居とか影絵芝居のような静けさを佇ませた独特の雰囲気を醸し出している。
登場人物も当時パリで活躍した実在の芸術家たちがたくさん出てくるのが面白い。ピカソやルソー、マチスのいるアトリエには実際に彼らの描いた絵も出てくるし、街中の広告にもロートレックやミュシャの絵が出てくる。
そう言う現実感ありありの設定の中で、オペラ座の中に水路があったり(これは「オペラ座の怪人」へのオマージュだよねえ?)、謎の魚型潜水艦が出たり、最後にはペダルで自転車みたいにみんなでこぐ飛行船が出たり(これはラピュタへのオマージュ?)とSF的な設定もありで楽しかった。全体的な設定がリアルだからこうした虚構の設定も説得力がある。
ただ、この映画は多様性とかジェンダー問題とかのテーマ性を出し過ぎで、今はやりだから、ハイ、ちゃんとやってますよ的な感じがしてそこはちょっと鼻白む。そういうのが好きな人が最近は多いのだろうけど、自分は昔の宮崎アニメ(魔女の宅急便とか)みたいにはじけてくれた方が好きだな。
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