ぶみ

恐怖の報酬 オリジナル完全版のぶみのレビュー・感想・評価

4.0
密林の果てに地獄を見た。

ウィリアム・フリードキン監督、ロイ・シャイダー主演によるサスペンスで、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による同名タイトルとなる1953年のフランス映画のリメイク。
油井で起きた火事の沈静化ために、ニトログリセリンを300マイル先の現場までトラックで運ぶこととなった四人の男たちの姿を描く。
今般、近くにあるミニシアターでリバイバル上映がなされ、再鑑賞したため、あらためての再投稿。
オリジナル版については鑑賞済み。
物語は、オリジナル同様、前半はトラックに乗り込むまでの男たちの姿が描かれるが、ここのパートは各登場人物がそれぞれの時間軸や場所で表現されるため、群像劇の様相を呈して展開、オリジナルよりも飽きることなく観ることができる。
また、オリジナルでは会社から与えられたトラックで任務に当たるのだが、本作ではポンコツで動きそうもないトラックを四人が自ら修理し、何とか動けるような状態とした上で、いざ出発。
そして、霧がかかった中、ライトが一つずつ点灯していき、トラックのシルエットが浮かび上がるシーンの美しさたるや特筆もので、まるでトラックに命が吹き込まれたかのよう。
その後は、オリジナルとエピソードとの違いはあれど、ハラハラドキドキの連続の中、やはり極めつけはイメージビジュアルにもなっている吊り橋のシーン。
結構早めにその吊り橋が登場するものの、CG夜明け前の時代において、このシーンも含め、以降、撮影の苦労が偲ばれるシチュエーションの連続であり、全てが本物だからこその迫力や臨場感は流石の一言。
タイトルに関しては、正直、原題である『Sorcerer』=『魔術師』の意味が最後までピンと来ず、オリジナル版の直訳であり、邦題でもある『恐怖の報酬』の方がスッキリ収まっていると感じた次第。
トラックが得体の知れない怪物かのように描かれており、オリジナル版との趣向の違いは見られるものの、オリジナルに負けず劣らずのアクションと狂気、完全版だからこその結末が見どころであり、以前観たBS版では「幸運を、セラーノへ」とされていた字幕が、本作品では「達者でな、セラノ」となっていたりと微妙な違いが楽しめるとともに、入場プレゼントでバッジが貰えた良作。

達者でな、セラノ。(幸運を、セラーノへ)

※2020年12月11日、BSで初回鑑賞。
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