みーちゃん

恐怖の報酬 オリジナル完全版のみーちゃんのレビュー・感想・評価

5.0
おもしろいのは間違いないと分かってた。それは、とても若い頃、昔の映画が好きで(たぶん背伸びしてたと思うけど)アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のを見たことがあるから。細部は忘れたがラストで唖然としたことだけは覚えてる。

だから、てっきり本作のラストも同じだと思い込んでた。でも、そこが違うということは、逆算すると描かれているテーマも必然的に違ってくる。両作の比較はできないが(とりあえず、今は1953年のを見返したいと思ってないし)、確実に別次元に進化させていたと思う。

ミッションそのものを描く、中心部分が凄いのは当然なので置いておくとして、私は序盤のエルサレム、パリ、エリザベスのシークエンスも好き。冒頭の5分間(パレスチナ過激派グループの彼がバスに乗るまで)だけで、目眩がするほどかっこいい。カメラの位置や動き、構図、1ショットの長さ、映像の全てが本当に好み。その好きの塊が、そのままシーンになり、シークエンスになり、映画を作ってるんだなって、自分の中で妙に納得した。

エリザベス市での車の事故も、よくぞ水道管を破裂させてくれたと、水飛沫越しの光景に、水滴越しの表情に、惚れ惚れする。

リアリティにおいては現実以上。例えば、スラム街の空気や湿度、登場人物の心の声など、目には見えないものが映し出されていた。

ミッションの終盤は、情景も、状況も、SFみたいになってた。もはや別の場所、別の次元に行ったのだと思う。恐怖、狂気、疲弊、どん底、地獄、どんな言葉を並べても陳腐に感じる。それより先の、もっと先の、更に先にある世界。…分かる気がする。

現世に戻ってからは、周りで何かが起きているだけで、自分自身は抜け殻か亡霊だったように感じた。

※本作をすすめてくれて、ありがとうございました。ウィリアム・フリードキン監督の作品をいくつか観て、本気で自分の好みだと実感しました。