故ラチェットスタンク

恐怖の報酬 オリジナル完全版の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

4.4
『運び屋』

 絶句した。何かしらのアクションとサスペンスの数珠繋ぎでシーンを捌いていく手腕に垂涎。映画的な時制の豪胆さ、場面同士が出鱈目に繋がれていく快楽。「極限状態下で疲弊していく姿」を客観的に淡々と追っていくスタンスに映画の映画性が完璧に合致してしまっている。ヤバすぎる。「出鱈目な繋げ方でも繋がってしまう」映画のアドバンテージが活かされまくっていて最高。思えば『キラー・ジョー』も愚行の出鱈目な数珠繋ぎだったな。序盤のクライムドラマ部分とか、中盤でのドライバーの試験でガンガンカットを割ってく所とか、とにかく台詞を切れるとこは全部切ってるし上記したように何かしらのアクションとサスペンスで見せている。とことん突き放した撮り方。人物を背景化させているので寧ろ事態の凄惨さ・過酷さ・激しさが容赦なく切り取られている。しかし出来事の羅列かと思えば人物の顔と風景のオーバーラップなど内省的な見せ方も挟んでくるので驚き。改めて手腕が恐ろしいな。