シネマスナイパーF

恐怖の報酬 オリジナル完全版のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

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走れども走れども待つは地獄
スター・ウォーズの裏で公開された闇

リアルでジメッとしているが徹底的にドライな視点
寄り添いながらも突き放した絶妙な距離感が美味い


ジャングルで右往左往する見せ場のための前振りに全力を尽くす姿勢
負け犬と言うよりは最早完全な負け組と化した男達は、一度踏み入れた以上行く先々どこまでも地獄
負のエネルギーを一箇所に集めましたとでもいうような南米、男達は知らず識らずのうちに導かれる
慰め合うでもなく、現状からの脱却のため、地獄めぐりとは気づかないまま、ジャングルへと入っていく

容赦ない爆発、容赦ない行く手
妥協しない容赦ない描写が続く中で、ロイ・シャイダーがジャングルの果てに見た業火のようなハッとする画が度々挟み込まれる
プログレ三昧なサントラは、場面を助長するというより、層を更に厚くしている

油田の爆発の被害者が村へ帰ってきた時の、直視し難い光景
真っ黒になった遺体を見て暴動を起こす村人
逃亡した先が既に凄惨だったのに、脱却へと向かう旅路がね、もうね
最大の見せ場である橋のシーンは、この作品全てを象徴していると思う
奴らは絶対に地獄行き、無常、無情


すげー映画だけど、事が動き出すまでが正直面白くはない
個人差ありすぎな序盤の4人の素性説明はともかく、4人が置かれている南米の現実的悪夢感は良かった
もう少しハッキリと4人に共通するものが存在していて必然的に同じ道へ走り出さなければならない理由づけがあれば、地獄めぐりにも、無常感漂うラストにも厚みが出たと思うんだけどな


マンディを観た時にも感じましたが、こういう「監督の作品」を観た時にこそ、真に圧倒された!って感想が残る
SORCERERは映画、監督不在のボヘミアン・ラプソディも映画、少女漫画の実写化も映画…
これは誰がための何のための映画ですか?と考えた時、監督の志が映画を支配しているものに特に魅力を感じますね
そうでないものが悪いとか言いたいわけではない