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ラ・ポワント・クールトのwisteriaのレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
4.6
先日レビューした『5時から7時までのクレオ』や『ダゲール街の人々』の監督アニエス・ヴァルダの伝説のデビュー作がAmazon primeに追加されています!

栴檀は双葉より芳し、これが初監督とは思えないほどすでにして洗練されていて、ネオレアリズモの残香とヌーヴェル・ヴァーグへの予兆を宿す映画史的な重要性に留まらず、今見てもハッとする大胆すぎる男女の構図や音楽の合わせ方など豊かな発想に満ちていて飽きることなく楽しめる80分になっている。可愛い猫🐈🐈‍⬛もいっぱい出てきます。

南仏🇫🇷の貧しい漁村ラ・ポワント・クールトの村人たちの日々の暮らしとパリから帰郷した破局の危機にある夫婦の街ブラ会話劇が交互に描かれていくスタイル。これがそれぞれネオレアリズモ風であり後のヌーヴェル・ヴァーグ風でもあって一粒で二度美味しい。

この手法は、男女の情交とヒロシマの現実を交互に描いていく四年後のアラン・レネ監督の『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』を想起させるがそれもそのはずそのアラン・レネ当人がこの作品の編集に関わっている。この直接的には交わらない二つの世界を一つの作品に、という着想をアニエス・ヴァルダ監督はフォークナーの小説『野生の棕櫚』から得たという。なるほど。

『5時から7時までのクレオ』同様かなり攻めた実験的な作品であってものんびり楽しめる穏やかさと気品を失わないのがこの監督らしさなのかなと思う。
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