けーはち

ラ・ポワント・クールトのけーはちのレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
3.4
「ヌーヴェル・ヴァーグの祖母」の愛称で90まで生涯現役で撮り続けた監督アニエス・ヴァルダの処女作。パリで結婚生活の危機に直面した夫婦が田舎の漁村(夫の故郷)で淡々と語り合う。その合間に住民の生活がドキュメンタリーのように差し込まれる。事件らしい事件もないヌーヴェル・ヴァーグらしい一本。水辺を散歩しながら夫婦の愛の在り方についての観念的な会話を演劇的な構図で交わす二人の傍ら、水質検査中の禁漁の場所で密漁をした若者が捕まり、子沢山の家で乳幼児が急逝し、若い男女が付き合って娘の父親とモメたり、長閑なようで生活に汲々とする現地住民の実情という、2つのストーリーが全く噛み合わないまま進行する。結局、主人公夫婦は存念なく語り合った末に破局はせず夫婦生活の先行きに一縷の不安を抱えたままパリへ戻る。漁村では若者カップルの仲が認められ彼らの結婚式が開かれる。最後まで何かズレたまま終わるけど、都会人と田舎の住民の乖離を実存的に描いたんだろうなぁ。